突然ですが、みなさんは何人きょうだいですか? 

 今、時の人となっているガンバ大阪の日本代表MF井手口陽介(21)は男3人きょうだいの末っ子。

 ちなみに、G大阪ユースからの飛び級昇格組では宇佐美貴史(デュッセルドルフ)堂安律(フローニンゲン)も、G大阪の大黒柱遠藤保仁も男3きょうだいの末っ子だ。

 それぞれ共通するのが「お兄ちゃんがサッカーをしていた」こと。兄の背中を追って育った弟たち。井手口の8歳上の長兄正昭も大きな背中で引っ張ってきた。JFL・FC大阪でサッカーを続ける29歳。ポジションも弟と同じボランチ。今夏、ベトナムリーグ・ホアン・アイン・ザライから移籍加入し、新しい夢に向かって挑戦中だ。

 プロ生活は平たんな道のりではなかった。福岡市生まれで10歳からサッカーを始めた。中学に上がる時にはアビスパ福岡のジュニアユースを受けたが不合格。地元のクラブチームから高校は名門・東福岡高に入学した。「最初、ヒガシに入った時はもう強烈で。レギュラーなんか取れないと思った」。だが、3年で主力となり、阪南大に進学。卒業後は、J2横浜FCに加入した。

 横浜FCでは思うような出場機会に恵まれず、プロ3年目で姉妹チームへの期限付き移籍が決定。新天地は香港(横浜FC香港)だった。だが、サッカーのスタイルや生活も想像できない海外へ身一つで渡ったのが人生の転機となった。

 「香港に行ったのが良かった。サッカーも生活も多国籍な感じで。日本人も周りに何人かいたので、すごく助けられた。日本じゃ感じられなかったことをモロに感じられたのが良かった」

 その後、1度横浜FCへ戻ったが、海外挑戦の願望は強かった。次なる舞台に選んだのは日本人選手がいないベトナム。「やりがいがあった。今後の日本人の評価は僕にかかっていると思うと」。環境は整っているとは言えず「スタジアムが汚かったり、シャワーもちょろちょろとしか出なかったり…」。全寮制だったが、寮の食事は口に合わない時もあった。タクシーやバスで街まで出てレストランで食事を済ませた。「寮のご飯が食べられなかった時はつらかった…」。それでも、海外の地で学ぶことの方が大きかった。

 だが、ここはプロの世界。今夏、チームの不振で助っ人の正昭は契約を切られた。すぐにタイに渡り、トライアウトを受けたが「ギリギリのところで破談した」という。「どうしようもない…」と失意の中で大阪に戻り、後輩がいたFC大阪へ練習のお願いに行った。無事入団も決定。弟もいる大阪で目標は高く持ち続けている。

 「また東南アジアでプレーしたいという気持ちはある」

 何度も何度も挑戦し続ける姿は、弟陽介にも刺激を与えているはず。日本代表にまで成長した弟については「頑張ってることが素直にうれしい。8歳離れているので、ずっとかわいい弟のまま。ひがんだりとか1回もない。代表でも頑張って欲しいと思っている」と優しい表情で語った。笑った顔は陽介とそっくり。お互い切磋琢磨(せっさたくま)して、日本を代表するきょうだいになって欲しい。【小杉舞】

 

 ◆井手口正昭(いでぐち・まさあき)1988年(昭63)8月10日、福岡市生まれ。阪南大から11年にJ2横浜FC加入。14年から1年間香港1部横浜FC香港へ期限付き移籍し、15年の横浜FCを経て16年からベトナム1部ホアン・アイン・ザライへ完全移籍。17年8月にJFL・FC大阪へ。J2通算22試合無得点。175センチ、69キロ。


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸、広島、J2京都、名古屋など関西圏のクラブ。弟、妹との3人きょうだいで長女。最近、1つ下の弟が結婚して、妹が増えました。