浦和レッズのホームとなる埼玉スタジアムは来年10月で開場から節目の20年を迎える。最寄り駅は埼玉高速鉄道の浦和美園駅。約1・2キロの距離で、徒歩で20分近くかかる。20年近く変わらなかったアクセスの改善=埼玉スタジアム駅新設の機運が高まっている。

02年W杯に向けて建設された当時、整地や道路の工事に囲まれていたスタジアム周辺は、この19年ほどで大きく変貌した。次々と住宅が完成し、着実に人口が増加。飲食チェーン店などのショップも集まり、今や1つの「街」になりつつある。人が増えたことで鉄道の必要性も高まってきたことは間違いない。

埼玉県、さいたま市にはスタジアム駅、中間駅(仮称)と2駅を新設し、東武野田線岩槻駅までの約7・2キロをつなぐ計画が浮上している。18年には採算という1つネックが「クリア」される発表もあった。同市が設置した識者による協議会が岩槻までの延伸した場合の採算が国の目安をクリアしたと報告。昨年8月に当選した埼玉県の大野元裕知事が埼玉高速鉄道の延伸を公約に掲げ、知事の発言を受け、さいたま市の清水勇人市長も実現に向けて取り組む姿勢を示している。

2万人以上集まった埼玉スタジアム駅設置の要望署名を埼玉県の大野知事(右)に提出する浦和の立花社長
2万人以上集まった埼玉スタジアム駅設置の要望署名を埼玉県の大野知事(右)に提出する浦和の立花社長

昨年5月から同12月まで「埼玉スタジアム駅設置」の署名活動を展開してきた浦和レッズは今月3日、埼玉県庁とさいたま市役所を訪問した。大野知事、清水市長に手渡しで届けた嘆願署名は2万3354人分。ホームゲーム19試合を含む、計24回の署名活動を行った立花洋一社長は「アクセスと利便性の向上、街の発展も考えると、何としてもスタジアム駅をつくりたい。悲願です」との強い思いを伝えた。署名を受け取った同知事は「レッズは埼玉県にとっての宝、財産。スタジアムへの延伸だけでなく、全体の中でもう1度、真摯(しんし)に検討したい」と前向きだった。

クラブ側によれば、対戦相手のサポーターからも多くの署名と激励をもらったという。立花社長は「実現してください、というみなさんの声を(署名の多さという)数よりも、その強い思いを感じました」と熱弁。埼玉スタジアムは日本代表を含めた国際試合も多く組まれ、利便性を求める声は埼玉県以外にも多い。清水市長は「一部の地域のこと捉えられているが、さいたま市全体、さらに市を越えたことと捉えられている。それを浦和レッズに発信していただいた」と署名活動の効果を認めた。

さいたま市の清水市長(右)に2万3000人以上も集まった署名を提出する浦和の立花社長
さいたま市の清水市長(右)に2万3000人以上も集まった署名を提出する浦和の立花社長

総工費は約860億円と見込まれており多額だ。採算が国の目安をクリアしたという同協議会の報告の中には、さらなる沿線開発と快速運行が必要とも指摘されている。反対意見も踏まえなければならないが、大野知事は「みなさんの悲願をいたずらに引き伸ばすことは政治家の役割と思っていない」ときっぱり。今年は東京五輪のサッカー競技も埼玉スタジアムで開催されるだけに、アクセス改善の声は増えていくだろう。「埼スタ駅」新設への議論と協議に向けた動きが、今、一気に加速している。【藤中栄二】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「現場発」)