<高校サッカー:四日市中央工1-0桐光学園>◇3日◇3回戦◇ニッパ球

 「触るな!」。四日市中央工(三重)の1年生ボランチ森島司が、上級生に“指図”した。右サイドバックから出た縦パスで、最終ラインの裏に抜け出す。その前方には3年生FW井手川がいた。先輩が触ればオフサイド、触らなければ関与なし。そう瞬時に判断すると、手で制して走らせず自らゴールまで持ち込んだ。この間に一瞬、足が止まった桐光学園守備陣を尻目に右足で決勝弾。「よく先輩を止めたね」と聞かれ「オフサイドでしたから」と笑った。

 四日市中央工らしい1年生ヒーローの出現だ。この試合も3人が先発。樋口士郎監督の弟で、同じく1年から正選手だったJ1横浜の樋口靖洋監督は「年齢に関係なく出番がもらえる伝統がある。中でも14番(森島)は素晴らしい。2年後が楽しみ」と褒める。中学時代はJ1名古屋の下部組織に所属。トップ昇格も有力視されたが「四中工からプロになる」と断った。

 地元で有名な「森島4兄弟」の三男。客席で見守った長男大さん(19)は2大会前の準優勝メンバーだった。その兄が「センスは東海地区で昔から一番だった」と言えば、樋口監督も「技術も戦術眼も1年とは思えない。(得点時)先輩を止められたのも視野が広いから」と評価する逸材だ。

 「この勢いで最後の国立に立って優勝する」と伝統校を下から突き上げていく。【木下淳】

 ◆森島司(もりしま・つかさ)1997年(平9)4月25日、三重県鈴鹿市生まれ。3歳でサッカーを始め、鼓ケ丘中時代はJ1名古屋のジュニアユースに所属。同2年夏に、四日市中央工に進むため地元のヴィアティン北勢FCへ移る。好きな選手はJ1鹿島MF柴崎。50メートル走は6秒76。173センチ、58キロ。血液型A。