【ドーハ27日(日本時間28日)=佐藤成】AFCアジアカップ(アジア杯)カタール大会の1次リーグD組を2位で通過した日本代表(FIFAランキング17位)が、決勝トーナメント(T)1回戦(31日)で対戦するバーレーンが当地で練習を公開した。

A代表は2010年3月以来対戦がなく、情報が乏しい。練習内容や要注意人物、チームの雰囲気は…。謎に包まれるE組1位のトレーニングに「潜入」し、チーム関係者や地元メディアから情報を引き出した。日本は28日を完全休養日にに充てた。

日没後のドーハに、明るい声が響き渡っていた。携帯電話のマップで検索したルートでは、たどり着くことができないトレーニング施設。門をいくつもたらい回しにされて、やっとのことで到着すると、天然芝2面が完備された照明付きのピッチで、バーレーンの選手たちがリラックスした雰囲気の中、ボール回しをしていた。

広報担当者から案内された午後5時30分、ギリギリ着。まだ練習は始まっていなかった。焦ってダッシュしたことをやや後悔していると、そのモハメド・アブドゥルガファー氏が出迎えてくれた。

「コンニチハ!」「アリガトゴザイマス!」

知っている日本語を連呼し、近付いてくる。次に戦う相手とは思えないほどフレンドリーに接してきた。

公開時間は15分間。さっそく情報収集に取りかかろう。まずは当地入りした後の練習開始時刻を問うと「5時30分」と即答した。続けて「1次リーグ3試合のキックオフ時間、その間を取った時間だ」と説明を受けた。

調べてみると、初戦と第3戦は午後2時30分開始、第2試合は午後5時30分開始だったため、全く「間」ではない…。さすが隣国の男たちだ。単に涼しい時間に練習を行っているだけの可能性が高く、昼間の調整はしない強い意図が、見て取れる。既に駆け引きは始まっているのか。

試合翌日の26日は完全オフだったという。翌27日の再始動から試合までは、毎日、調整をしていく。日本との対戦について、モハメド氏に展望を求めると「タフなゲームになる」。印象深い日本選手についても断言した。

「私にとっては中田(英寿)だね」

侮れない…。やはり「将軍」の名は知っていたが、現役選手の名前は言わないのか。バーレーンだけに、分析している選手の名を挙げるほど「バーレーバーレー」なことはしてこないのか。混乱していると、笑顔で言ってきた。

「今の代表なら久保(建英)だね!」

…。そ、それでは、来場を予想しているサポーターの数も聞こう。「ソーマッチ!」とニヤリ。突っ込むと、隣の島国から50人乗りのバスが20台、飛行機(直行便で50分)や自家用車でも5時間ほどかけて、大挙してくるという。サウジアラビアに架かる唯一の橋(全長25キロ)を通って。

マップで調べると、陸路は「5時間」と出るが「3時間だよ」と譲らない。なぜ少なく“盛って”くるのか不明だが、少なくとも、イラク戦で経験したような大アウェーの環境になることは想定して間違いなさそうだ。

そんな会話をしていたところ、選手たちが1箇所に集まってきて、いよいよ練習開始か…と思いきや、何やら、ある選手を胴上げし始めた。

第3戦ヨルダン戦で代表通算100試合出場を達成した背番号10のコマイルを祝福したものだという。記念撮影まで行い、一体感を高めた。その後はジョギング、ストレッチ、パスアンドコントロールのトレーニングを行っている途中、モハメド氏の時計が鳴った。開始から15分が経過したことを知らせるもので、厳密に施設の外へ出ることを促された。

その道中、モハメド氏が興味深い話題を提供してきた。21番のGKサイド・ジャファルが、日本との前回対戦時=10年3月の国際親善試合に出場していたという。38歳の大ベテランで、今大会は出番なしだが、日本との対戦は過去4度もあるという。その経験を惜しみなく伝えているそうだ。反対の立場の選手は日本にはいない。強みを、最後の最後にアピールしてきた格好だ。

チームを率いるピッツィ監督は、前回大会でサウジアラビア代表を指揮していた。決勝T1回戦で同じく森保ジャパンと当たり、敗れて退任に追い込まれた因縁がある。2大会連続で同監督が指揮するチームと8強進出を懸けて対戦することになった。

その点も含め、地元メディアにも取材を敢行した。日本との決戦を前に「アルワタンスポーツ」のフサイン記者は「勝敗を予想することは難しいけれど、とてもいい試合になるだろう」と笑顔で話した。そして「7番(マダン)10番(コマイル)9番(ユスフ)には警戒してくれ」とウインクし、助言をくれた。

中でもユスフは危ない。チェコリーグでプレーする194センチの長身FW、というだけでなく、スピードとテクニックに優れるアタッカー陣によるカウンターやロングボール作戦には対策を練る必要がありそう、な雰囲気が彼の言葉の端々から伝わってきた(たぶん)。

さらにピッチ外も探れば人間性も見えてくる。前日26日のオフの過ごし方も質問すると、チームでドーハ近郊のルサイルへ向かい、ショッピングを楽しんだという。決勝の会場がある都市…早くも頂点を見据えているのか。案の定!? その行程中にモハメド氏は大会の優勝杯バッジを買ったといい、得意げに見せてきた。やや気は早いが、タイトル獲得への思いは各国、共通で強いようだ。

日本は、メディアの数の多さで国際サッカー連盟(FIFA)やアジア・サッカー連盟(AFC)に広く知られている。今回の「潜入」で、報道陣の数ではひとまずバーレーンを圧倒していることは確認できた。我々に圧倒されたのか、サービス精神旺盛なのか、とにかく何でも答えてくれたバーレーン陣営。気分良く練習会場を後にしようとしたら、同国メディアがスクラムを組んで「隣のピッチで一緒に写真を撮ろうじゃないか」と要求してきた。な、なめるなよ! と思いながらも、こういう時に“中東半端”な対応はできない。前哨戦だ。満面の笑みで、全力で、記念撮影に応じた。

本番も絶対に負けられない。一発勝負への突入を前にしても謎の余裕。さらには経験、アウェー環境、一体感、監督…。死闘になることは間違いなさそうだ。

【アジア杯】決勝トーナメント日程・結果 日本代表は? 1回戦1月28日から