新潟明訓は那覇西(沖縄)に勝った。16年ぶり6度目の出場で、選手権初勝利を遂げた。後半34分、FKからのこぼれ球をMF関口正大(2年)が蹴り込み先制。タイムアップ寸前にFW田辺智大(3年)がダメ押し点を決めた。2日の2回戦はインターハイチャンピオンの東福岡(福岡)と対戦。選手権初勝利の勢いそのままに、大物食いを狙う。

 関口の目の前にボールがこぼれてきた。後半34分に得たFKだ。MF中村亮太朗(3年)が放ったキックは右ポストにはじかれ、相手DFに当たって流れてきた。「こぼれ球がきた。自分の日だなと、思った」。右足をダイレクトに振り切ったボールは、ゴール右隅に飛び込んでいく。チーム最多7本のシュートを打ち続けた男は、7本目のシュートを得点につなげた。チームの歴史を切り開く決勝ゴールだった。

 「自分の先制点は明訓に新たな1ページを刻んだ。今まで積み上げてきたOB、先輩たちに感謝したい」と関口は言った。インターハイこそ11年に8強入りの実績はあるが、選手権は6度目の出場で初勝利。「イライラしたら負け。PK戦まで頭をよぎった」と田中健二監督(38)が振り返る展開を2年生が打開した。「チャンスがずっとあって決め切れなかった。落ち着いて押し込めたのはよかった」と殊勲者は言った。

 フィールドプレーヤーの中でただ1人の2年生。しかし、勝者のメンタリティーを既に持ち合わせていた。FC五十嵐JY時代は全日本ユース(U-15)フットサルで全国制覇。「フットサルとサッカーは違う」と話したが、大舞台に余分な力を入れずに躍動した。「いつも通り」と話した関口は「2年生だから伸び伸びプレーしている」と言った。

 1年生時の14年12月28日に左鎖骨を骨折した。リハビリが終わり練習開始した15年3月に、再び同じところを故障した。完全復活を遂げたのは5月。チームに欠かせない存在は、すぐに先発組に復帰した。「ケガは挫折だった。でもそれがあるから今の自分がある」。故障を乗り越え、ひと回り大きくなった関口はインターハイ覇者・東福岡との対戦も平気な顔だ。「臨機応変にプレーする明訓スタイルを出したい」。その言葉は夏の王者をのみ込む勢いだった。【涌井幹雄】