1人がミスをしても誰かがカバーをすれば、大火事にはならない。それを証明した試合だった。鹿島アントラーズが宿敵浦和レッズの猛攻に耐えて、今季初めての連勝を飾った。

 前半36分。DF安西幸輝がDF昌子源にバックパスをした。その距離が近すぎた。安西に詰めていた浦和MF橋岡大樹にそのままついてこられた。昌子はボールを蹴ることができず、ペナルティーエリア内で奪われた。「試合を台なしにしそうになった」(昌子)と決定的なピンチが生まれかけたが、そのときのGK曽ケ端準の飛び出しは、速かった。橋岡のシュートを至近距離で体に当てる。こぼれて再び相手に渡った球は、三竿健斗らが追う。

 曽ケ端は言う。「カバーの意識がみんなあったと思いますし、それがたまたま僕だったというだけ。多くの場面でみんなが、周りをよく見えた良い対応が多かったと思います」。

 その場面ではミスをした昌子だが、前半7分の浦和のエース興梠慎三の飛び出しには、好判断のスライディングで防いだ。「もう1人走っていたと思いますけど、浦和のエースですし、必ず慎三さんに出てくるんだろうと思って、もう1人の方は捨てて、慎三さんばかり気にしていました」。

 後半はあえて前線から追わずに、守備のブロックを敷いて猛攻に耐え抜いた。その堅い守備は、鹿島らしさでもある。2列目の左の中盤に入って追い回したMF永木亮太は「あれができるのが鹿島の強みだと思っています。久しぶりにこういう勝ち方ができたなって、自分の中では手応えがある」と胸を張った。

 相手のオリベイラ監督は、鹿島を5年間率いて、3連覇にも導いた元指揮官。その相手に、3万3000人超のサポーターも強烈なブーイングで、鹿島イレブンの背中を後押しした。「サポーターの力がどれほど力になるか、今日の試合でまた1つ証明できたと思います」。昌子はそう言って、感謝していた。