ヴィッセル神戸はこの3年、イニエスタら世界でも超一流の選手を獲得してきた。一方で獲得の基準は明確で厳しい。「プレーだけでなく、どれだけ謙虚で勤勉か」(三浦淳寛スポーツダイレクター)。その過程で獲得したFWダビド・ビジャ(38)。この試合で現役引退となったが、イニエスタに負けないほどの人物家だった。

19年12月7日のJ1最終節の試合後、本拠地ノエスタで引退セレモニーが開かれた。同僚のFW藤本憲明(30)が、ビジャの写真を掲げてセレモニーを盛り上げた。その姿を見たビジャは翌日、自らのスパイクにサインとスペイン語で「ありがとう、これからも忘れないで。ノリは僕の友達です」と記し、藤本に贈った。

藤本は「すごくうれしかった。あれは僕の家宝にします。ピッチ内でもダビ(ビジャの愛称)にサッカー選手としてのあり方を教わった」。この日の決勝で藤本がゴールを決めたのは、偶然ではなかったのかもしれない。ビジャのためにも戦った。

ビジャは今後、ニューヨークで自身がオーナーを務めるクラブ「クイーンズボロFC」で経営者の道を歩む。プレーでも人間としても尊敬される、ビジャ2世の輩出を目指していく。そして神戸で築かれた友情もずっと語り継がれていく。【横田和幸】

 

◆ダビド・ビジャ 1981年12月3日、スペイン・ラングレオ生まれ。バレンシア、バルセロナ、Aマドリード、ニューヨーク・シティー(米国)などに在籍し、19年神戸入り。今季リーグ28試合23得点。スペイン代表で10年W杯南アフリカ大会で5得点(得点王)を挙げ優勝。同国代表最多59得点(98試合)。174センチ、68キロ。