名場面に名言あり。サッカー界で語り継がれる記憶に残る言葉の数々。「あの監督の、あの選手の、あの場面」をセレクトし、振り返ります。

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「これは、勝ち負けよりも重要ではないかと思います」

18年4月21日。浦和レッズを暫定監督として率いていた大槻毅が口にした。オズワルド・オリベイラ監督の就任が決まり、指揮官としてはいったんは最後だった第9節の北海道コンサドーレ札幌戦(0-0)後の記者会見だった。

チームは堀孝史前監督の成績不振で、開幕から5戦未勝利。そこで急きょ就任し、公式戦6試合で4勝2分け。わずか約3週間でチームを再建した。文句なしの数字を残した上で、残した言葉。その直前には「18人のグループから11人を選ばないといけないですが、そこに入っていないメンバーも非常にすばらしい姿勢を見せてくれた」と語った。

プロとして結果を求められるのは当然。それでも一体感の大切さを「勝ち負けよりも重要」と、不器用ともいえる言葉で訴えた。

スーツ姿にオールバックの髪形で、ベンチに立つこわもてのいでたちが「組長」「アウトレイジ」などと話題となり、人気者に。

札幌戦が行われた埼スタには3万9091人が集結し、大槻氏が表紙となったマッチデープログラムが完売した。記者会見の最後には「お世話になりました。ありがとうございました」と静かな口調で締めた。