Jリーグは6月27日のJ2再開とJ3開幕、7月4日のJ1再開を発表しました。約4カ月ぶりに迎えるその時を前に、日刊スポーツでは歴代のJリーグの選手、監督、関係者から生まれた言葉をピックアップ。あの日、あのときの印象的なシーンを振り返ります。

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「セットプレーだけでハットなんて、なかなかできるものじゃないね」。

アルビレックス新潟MFマルシオ・リシャルデスは、2010年7月24日のベガルタ仙台戦(ユアスタ)でハットトリックを達成した。1点目がPK、2点目が直接FK、3点目が直接CKと3得点すべてセットプレーで決める離れ業だった。

2000年にジュビロ磐田MF藤田俊哉がPKだけで3得点した例はあるが、PK、FK、CKと3種類のセットプレーでハットトリックを達成したのはJリーグ史上初。試合後にマルシオは「(後半ロスタイムのCKからの)3点目は狙って蹴った。セットプレーだけでハットなんて、なかなかできるものじゃないね。これからも練習を積んで、もっとキックの精度を上げたいね」と笑顔で振り返った。

2010年のマルシオは最終的に得点ランク3位タイの16ゴールをマークした。FW前田遼一(ジュビロ磐田)とFWケネディ(名古屋グランパス)に1点差で得点王を逃したが、16ゴールのうち直接FKによる得点が7点を占め、2003年のFWウェズレイ(名古屋)がマークした直接FKゴールのシーズン最多記録を更新した。

一方、PKは3度蹴ったものの、決まったのはハットトリックを達成した仙台戦の1点だけ。「PKを2回外していたので、どちらかを決めていたら得点王になれたかもしれない」と2度のPK失敗を悔やんでいた。

「PKよりFKの方が簡単だ」とはFKの世界的な名手、元イタリア代表FWジャンフランコ・ゾラの言葉だが、2010年のマルシオも、そんな心境だったに違いない。