Jリーグは6月27日のJ2再開とJ3開幕、7月4日のJ1再開を発表しました。約4カ月ぶりに迎えるその時を前に、日刊スポーツでは歴代のJリーグの選手、監督、関係者らから生まれた言葉をピックアップ。あの日、あのときの印象的なシーンを振り返ります。

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「この記録はしばらく塗り替えられないと思う」

19年11月24日。J2第42節の柏レイソル-京都サンガ戦で、柏のケニア代表FWオルンガ(26)がJリーグ新記録となる1試合8得点を挙げた。

スコアは13-1。2チーム合計の最多得点試合と1試合最多得点チームのJリーグ記録も更新する珍試合となった。うなだれる京都の選手とは対照的に、身長193センチの大型助っ人は「最高の気分。自分たちがハードワークした結果。チームメートに感謝したい」と涼しい表情で振り返った。

柏はこの試合の前節でJ2優勝を決めており、一方の京都は勝てば6位以内のプレーオフ圏が狙える状況だった。当然、京都の選手たちは王者を食うつもりで敵地に乗り込んだが、痛い返り討ちに。当時、京都の一員としてピッチに立っていたある選手は「自分たちもモチベーションは高かったけど、オルンガがすごかった。途中から早く試合が終わってほしいと思っていた」と苦笑いを浮かべた。

オルンガの持ち味は体格を生かしたボールキープだけではない。独特のリズムで運ぶボールさばきと、長い足から放たれるシュートはタイミングがとりづらく、対戦するGKたちは手を焼いた。本人にとっては18年夏に加入し、初めて1年を通して戦った日本のリーグ戦。「素晴らしい指揮官」と尊敬するネルシーニョ監督のもとで守備面なども改善されて覚醒し、シーズン開始から戦った昨季のJ2では30試合で27得点。J2では無双状態だった。

1試合8得点の偉業は母国ケニアでもニュースとして報じられた。オルンガは大学時代に宇宙工学を専攻して通信衛星などについて学ぶなど、インテリ男子な一面も持つ。加入から約2年が経過して日本にもなじんでおり、昨オフに受けた海外クラブからのオファーも断り、残留を選択。約2年ぶりのJ1の舞台でも、大暴れの予感がする。