横浜FCのFWカズ(三浦知良)が鳥栖戦で先発出場し、53歳5カ月10日のルヴァン杯最年長記録を更新した。約半年ぶりの同杯再開戦で、カズは後半18分まで63分間プレー。前半30分にダイビングヘッドで枠内シュートを放つなど見せ場をつくった。チームは1-0で勝ち、公式戦の連敗を4でストップ。1次リーグ突破に望みをつなげ、カズは主将の役割を全うした。今季初の公式戦のピッチで、プロ35年目の軌跡を刻んだ。

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「職人だから、サッカー職人」。10年前のカズの言葉を思い出す。「なぜ引退しないのか」と聞いた。誰もが思う疑問だったからだが、答えはなかった。しばらく考えてから「分かりましたよ」と笑顔。出てきた言葉が「職人」だった。

「職人に引退はないでしょ。作り続けなければいけない。芸術家は作品に納得できなければやめるけど。職人は違う」。うれしそうに説明した。「職人」は、尊敬する存在でもある。好物の「おはぎ」やこだわりの「靴」を作り続ける人たち。「すごいよね。憧れる」と言ったこともある。

「引退」という言葉は、頭にない。区切りの時期が遠くないことは分かっていても「サッカーをやめることはない」と言う。J1やJ2がダメでもJ3や地域リーグもある。「この年齢になると、続けるには環境も重要」と言うが、どこのピッチでもプレーを続ける覚悟と意欲は衰えない。

多くの選手は引退が近づくと指導者などへの転身を考える。しかし、カズには興味がない。「監督は無理だよ。解説もダメ。システムとか苦手、分からないから」と笑う。「サッカーが好き」とは言うが、本当に好きなのは見たり、教えたりすることではなく「プレーすること」なのだ。

「記者も同じでしょ」と言われた。「書く場所があれば、書き続けるでしょ。僕も同じですよ。死ぬまでプレーするから、死ぬまで書いてよ」。初めて取材をしてから35年、言葉どおりカズはまだピッチを走り続けている。【荻島弘一】