鳥栖でJリーグ初のクラスター(感染者集団)が発生した。金明輝(キム・ミョンヒ)監督(39)の新型コロナウイルス感染判明から一夜明けた12日、鳥栖は新たに6選手とトップチームスタッフ3人の陽性を発表。同監督を含めて同じクラブから初の2桁となる10人の感染者を出した。同日開催予定のルヴァン杯広島-鳥栖は中止となり、クラブは当面の活動を自粛。J1では15日のG大阪戦開催が絶望的となり、Jリーグ全体が厳しい状況に追い込まれた。

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感染の恐怖が身近に潜む今、感染者が出ることは責められない。回復を祈り、これ以上拡大しないことを切に願う。ただ、鳥栖のケースはここまでの拡大を防げなかったかとの思いも残る。金監督は感染が発覚した10日、練習に姿を見せていた。当日朝は36・4度だったが前夜は38度の高熱があった。ガイドラインでは「2日連続で37・5度以上」が自主隔離の基準のため違反していない。だが、市井で感染拡大する今だからこそ、監督本人にも周囲にも慎重な対応を選択する用心深さがほしかった。

高温の気候や仕事への責任感もあり、自身の体調の変化に気付きにくいのがあるかもしれない。現状、自覚症状は自己申告でしか露見しない。Jリーグのガイドラインには「『体調が悪いけど我慢して練習に出よう、仕事にいこう、ちょっと試合を観るだけだ』といった行動が、その方が所属する集団に感染を広げてしまう可能性があります。発熱・咳・倦怠感などの症状を認めたら休む勇気を持つこと。そのことをクラブに報告する勇気をもつことを、是非お願いいたします」とある。いま一度、全員が原点に立ち返り、未知の敵に立ち向かう契機にする必要がある。【サッカー担当キャップ・浜本卓也】

◆金明輝監督の一連の状態及び鳥栖の動き

▽8日(土)=J1鹿島戦(午後7時、カシマ=後に金監督の発症日に認定)。朝の検温は36度3分。感染の発表内容は「昼体調不良」から「昼に微妙な違和感を感じる」に訂正。発熱などの症状なし。試合は0-2で敗れる

▽9日(日)=佐賀に戻る。朝の検温は36度4分。コーチングスタッフとマスクを外すなどし、クラブハウスで15分以上のミーティング。倦怠(けんたい)感があり、夜に38度まで発熱

▽10日(月) 高熱から一夜明けて検温で36度4分に。午前練習で指導後に再び倦怠感があり、佐賀県内の病院でPCR検査を実施、午後3時に陽性判定

▽11日(火) 選手34人を含む関係者89人がクラブ独自のPCR検査を受ける。監督の濃厚接触者となったスタッフ3人は保健所主導の同検査で陰性判定に

▽12日(水) 11日から発熱していた選手、スタッフの計2人が抗原検査の結果、陽性判定。2次検査を受けた7人も陽性。ルヴァン杯広島-鳥栖は中止に