エンターテイナー・カズが日本に、世界に笑顔を届ける。横浜FCのFW三浦知良が26日、54歳の誕生日を迎えた。

オンライン上で行われた誕生日イベントでは、なじみのタキシード姿で登場。同じ誕生日のサザンオールスターズの桑田佳祐(65)になりきり、自らバースデーソングを熱唱した。今日からいよいよJリーグが開幕。日本サッカー界のキングは前人未到の36年目のシーズンを迎える。J1最年長ゴールで、エンターテインメントの持つ素晴らしさを体現する。

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紺色のタキシード。黒のベルベットのちょうネクタイ。白のシャツが映える。オンライン上に登場したカズは「普段着というかね。大人なので、タキシードを着てみました。エレガント、セクシーにね」。54歳となった。「年齢に関しては、今更言うこともない」。渋みがグッと増す。

突然、画面が切り替わった。だて眼鏡を掛けたカズはエアギターを始め、歌い始めた。過去に世界エアギター選手権で優勝した芸人のダイノジ大地も驚き? の演奏ぶり。「ハッピーバースデー トゥーユー ハッピーバースデー ディア ケイスケ クワタ アンド カズ」。同じ誕生日で、親交のあるサザンオールスターズの桑田佳祐の歌モノマネを披露。「全く練習していないです。自作自演。桑田佳祐さんになりきって、すみませんでした」と笑ってみせた。

いつもならば、報道陣から祝福されてきた誕生日イベント。ただ当たり前が、日常から消えた。晴れの場も、コロナ禍の影響で、周囲にはクラブ関係者しかいない。

カズ テレビを見ていても、本当に苦しい思いをしているなと思う。その中で去年も練習が出来て、試合も出来て。少しではあるけど、お客さんも応援してもらえる。かけがえのないものだと思う。みなさんに感謝しています。サッカーもエンターテインメントの1つ。こういう時だからこそ、エンターテインメントで、明るい元気を与えられたらいいなと思う。いいニュースを届けられたらと思う。

そんな思いを巡らせ、最近、葛飾を訪れた。大好きな映画「男はつらいよ」シリーズの主人公、渥美清が演じた寅さんに扮(ふん)して-。ハットをかぶり、手にはトランクケース。帝釈天を回り、舟にも乗った。「街を歩いていたら『寅さんかと思ったらカズさんじゃないですか』と言われてね」。映画の1シーンを現代に再現するかのように。

どんな時も、周囲に笑顔をもたらす希代のエンターテイナー。迎える36年目のシーズン。94年にジーコ(鹿島)が、マークした41歳3カ月12日のJ1最年長得点記録の更新に期待が掛かる。「結果というものは大事だと思うし、そこにたどり着くプロセスも大事」。キングのショーが幕を開ける。【栗田尚樹】

▽カズのエンターテインメント

◆真っ赤なタキシード Jリーグ元年(93年)のMVP表彰式。壇上に浮かぶ巨大な風船が爆音とともに破裂すると、中から現れたのがカズ。クリスマスのディナーショーでトシちゃん(田原俊彦)が着ていたのを見て「オレも一度は着てみたい」と真っ赤なタキシード姿で登場した。

◆アフロ 95年のJリーグ・アウォーズ。ベストイレブンの表彰で、アフロヘアのかつらをかぶって登場し、会場を盛り上げた。「思いつき。(表彰会場の)ホテルに着いてから考えた」と笑顔だった。

◆祈りのカズダンス 11年3月29日の東日本大震災復興支援チャリティーマッチで、Jリーグ選抜として出場したカズは後半37分に右足でゴールを決めた。そのまま代名詞のカズダンスを披露。被災地へ、一瞬でも苦しさを忘れてサッカーに没頭してもらいたいという思いを込めた。

◆100本のバラ 11年にFIFA女子年間最優秀選手を受賞した元なでしこジャパンのMF澤穂希さん(当時INAC神戸)へ真っ赤な100本のバラを送って祝福。「カズさん本当にすごすぎる。うれしい。信じられない」と澤さん。