試合前から大雨の徳島・鳴門。終了を告げるホイッスルが鳴り響いても、空模様が変わることはなかった。
テレビ画面には、悪天候の中、スタンドで声援を送り続けた徳島ヴォルティスファンの1人の女性が映し出された。女性は、目元をハンカチで拭った。目は真っ赤。顔を“クシャクシャ”にしていた。大粒の涙が、こぼれていた。
同時刻。徳島のベンチ前。試合終了とともに、男性はその場で膝を突いた。何度も両手でガッツポーズを決め、歓喜の声を上げた。降りしきる雨など関係なく。甲本偉嗣ヘッドコーチ(41)は、何度も何度もうなずいた。かみしめるように。
7年ぶり2度目のJ1復帰となった徳島。今季初勝利を、悲願のJ1ホーム初勝利で彩った。J1初挑戦となった14年シーズンは、最下位の18位で1年でJ2に逆戻りとなった。J1通算20試合目の今節。一時は同点に追いつかれながらも、勝ち越しに成功し、ホームで勝ち星を手にしてみせた。
女性ファンの涙、こみ上げるモノをかみしめた甲本ヘッドコーチ。徳島の地に、少しばかりか、晴れの笑顔が咲き渡った。
甲本ヘッドコーチ やったぞー。ようやく勝てたぞーと言いたいですね。
遠く離れたスペインの地を思った。新型コロナウイルスの影響で、スペイン人のダニエル・ポヤトス監督(42)や、新加入の外国籍選手が、来日出来ていない。監督代行を務める甲本ヘッドコーチ。スペインとは連日のように、オンラインでミーティングを行うなどしてきた。「何度かチャンスがあった中、勝つことが出来なかった。また一丸となって戦いたい」と言葉を振り絞った。
試合前のミーティングでは「これまでいい流れで点を取れた中で、積極的に守備にいくことが少なかった。そこで引かない、と。得点を取った後も、ラインを上げて、ボールロストを怖がらずに行くこと。それが勝利につながるよ」と選手に伝えた。現場にいる甲本ヘッドコーチだからこその言葉。選手の背中を後押しした。
待望のJ1ホーム初勝利。監督は不在でも、そこには一丸となった徳島の魂があった。スタンドのファン、サポーターが、その熱きハートを支えている。スペイン-日本・徳島。どれだけ距離があろうと、時差があろうと。勝利を欲する気持ちに変わりはない。徳島は、これからも前を見続け、勝利を目指していく。【栗田尚樹】



