決勝初進出の名古屋グランパスがセレッソ大阪を2-0完封で下し、初優勝を飾った。10年のリーグ優勝以来、11年ぶりのタイトル。

後半2分にCKからFW前田直輝(26)が先制ゴール。アシストしたFW柿谷曜一朗(31)は4年前、C大阪を初優勝に導いた主将だった。古巣との激戦を制した移籍1年目での初優勝に、格別な思いに浸った。MVPは決勝で2点目を決め、大会4得点のMF稲垣祥(29)が獲得した。

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歓喜の瞬間まで柿谷はベンチで声を張り続けた。「どっちに転んでもおかしくないゲーム」と柿谷が振り返る激闘。その主導権を名古屋にもたらしたのが、柿谷の“頭”だった。

前半の名古屋は防戦一方だった。後半開始直後の2分に得たCK。相馬からのボールを柿谷が頭で触って軌道を変え、詰めた前田が頭で押し込んだ。「走り込んだところにちょうど(ボールが)きて、うまくそらせてよかった。攻められる時間も多かった中で(全員が)ハードワークを怠らなかった」。勝利への執念を詰め込んだ1点だった。

4年前と同じ埼玉スタジアム。観客席からながめる歓喜の光景は同じでも、まとうユニホームは違った。下部組織から育ち、「顔」として君臨したチームを出て1年目。「決勝がセレッソと決まってから意識しないつもりで過ごしていたが、どうしても意識して生活していた。複雑な気持ちでぶっちゃけやりたくなかった」と明かし、「いざやってみると楽しかったし、移籍したから一緒にやってきた仲間が素晴らしく見られたのはよかったと思う」。

名古屋からは2年前にも獲得のオファーを受け、1度は断っている。愛着深いチームを離れ、「タイトルをとりたい」と新たなキャリアを求めた。その思いをフィッカデンティ監督が後押しした。指揮官は試合後、「愛情がなければ結果は残せなかった」と言った。

弱点は積極補強で「血」を入れ替える。その過程でこわれた柿谷がタイトル獲得に貢献した。「思い出に残る試合」。11年ぶりタイトルには、多くの思いが詰め込まれた。【実藤健一】