奇策のセットプレーで世界が注目する高川学園(山口)が、新技で桐光学園(神奈川)を撃破した。

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0-0の後半15分。右CKから3人の小さな円陣をニア、ファーサイドに形成。定番の“グルグル円陣”ではなく“回らない円陣”で動きだし。MF西沢和哉(3年)が「アドリブ」を加え、決勝点を挙げた。“グルグル円陣”はスペイン語で「嵐」を意味する「トルメンタ」の名が付くが、今回は「少しトルメンタ」で、14大会ぶりのベスト4進出を決めた。

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台本には「少しトルメンタ」と記されていた。0-0の後半15分。右CK。ニア、ファーサイドに、小さな円陣が形成された。2つのサークルは、3人ずつの構成。いつも通り“グルグル”回ると思いきや、すぐさま散らばった。

演者が「アドリブ」を加えた。途中出場のMF西沢は、1人だけファーに残っていた。「意外にニアが空いていないと思った。残っていたら、流れてくるかな」。現場の空気感を大事にした。シナリオでは、ニアがファーに流れ、スペースを空け、ファーの3人が流れ込む予定だった。“アクション”が始まると、ファーからニアに走り込んだのは3人の内、2人だけだった。

西沢が、脚本を書き換え、筋書きのないドラマを完成させた。相手のクリアボールは、西沢のもとへ。押し込むだけだった。“グルグル円陣”の正式名称は、スペイン語で「嵐」を意味する「トルメンタ」。回転しない今回は「少しトルメンタ」と笑う西沢は、3回戦の対仙台育英(宮城)でも、途中出場から決勝ゴールをマークした“千両役者”。江本監督も「持っているやつ」と笑った。

表の役者が西沢なら、陰の立役者はベンチ外のチームキャプテン。ニア、ファーサイドに円陣を配置する“新技”は、大会直前に故障したDF奥野が、試合前日に練り出した作品。アドリブ加えた西沢との共同プロデュースで、14大会ぶりのベスト4進出を決めた。ゲームキャプテンのMF北は「仲の良さがセットプレーにもつながっている」とうなずいた。

全員が主役の高川学園。1回戦で世界中の関心を集めた「トルメンタ」は、FW中山のアイデア。3回戦で披露した4人が1列に並ぶ「列車」はチーム全員の作品。初戦から4試合連続でセットプレーから得点をマークする“演劇軍団”。試合前に、江本監督が「奥野を国立に連れて行こう」とゲキを飛ばした通り、聖地の舞台に立つ。8日の準決勝の相手は、前回準Vの青森山田。国立の大舞台でも、嵐の演技を構成し、拍手喝采を浴びる。【栗田尚樹】

◆トルメンタ 高川学園が、セットプレーの際に駆使する奇策。中で待つ数人が円陣をつくり、グルグルと回転しながら動きだす。円陣の人数は、さまざま。手をつなぐ時もある。山口県大会前に、FW中山桂吾(3年)が「マークが付きにくい」と考案。部室前のボードに貼ってあった磁石の形からヒントを得た。スペイン語で「嵐」「旋風」を意味する言葉が語源。選手が運営する高川学園サッカー部の公式ツイッターで、正式にこの名が発表された。

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