JFAハウス(東京・文京区)の売却を決めている日本サッカー協会が、同じ文京区のトヨタ自動車東京本社ビルへの引っ越しを検討していることが2日、分かった。近日中に発表される。1フロアか2フロアを借りる予定で、来年6月までに移転を完了させる。新型コロナウイルスの影響などで業績不振が続き、03年に購入した自社ビルを200億円で売却し、年間2億~3億円の賃貸生活に入る。

日本サッカー界の象徴・JFAハウスが、20年歴史に幕を閉じる。02年W杯日韓大会の黒字一部などを原資にして03年に60億円で購入。その間、W杯5大会連続出場や女子W杯優勝など、数々の栄光とともに歩んできた「指令本部」だが、コロナ禍の波には太刀打ちできなかった。

業績が伸びなかった上、町のサッカースクールなど、小規模の団体から安定経営していた団体まで倒産するなどの非常事態が続き、サッカーファミリーへの助け舟を出さないといけない。同時に日本代表の強化を図ることも怠ることはできない。赤字が続き、昨年末の臨時評議員会では22年度予算を報告し、過去最大の46億円超の赤字を見込んだ。

まだ積立金含め運用可能資金は100億円はあると言われているものの、このまま不景気とコロナ禍が続くと、いつ底をつくか分からない。さらにコロナの影響でテレワークなどの在宅勤務が増え、JFAハウスのような広い仕事空間は必要なくなったのも事実だ。日本協会によると、コロナにより職員の出社率は20%未満になったという。

日本協会の職員は200人程度で、すでに強化部や審判部の一部、指導育成部など約50人は、千葉・幕張の夢フィールドに引っ越し済み。田嶋幸三会長ら幹部や残るマーケティング系など職員、JFL、なでしこリーグ、Fリーグなどの関連団体が、引っ越しの対象となる。

日本協会幹部は「文京区を離れることはまったく考えなかった。JFAハウス前の道路をサッカー通りに名称変更してもらったり、多くのバックアップをしていただいている。今後、業績が伸びてまた自社ビルを持つようになっても文京区の中で考えたい」と話した。

日本協会は来年6月までにJFAハウスから完全撤退する。その後、JFAハウスは壊され、同敷地にはタワーマンションが建つ予定。日本協会は、トヨタ自動車東京本社ビルの一角で新たな歴史を歩むことになる。(金額は推定)