苦しい状況を耐え、ラストプレーで同点に追い付く粘りを見せた末の優勝で、INAC神戸レオネッサのMF北川ひかる(26)が、地元石川に力を与えた。

試合は序盤から、三菱重工浦和レッズレディースに主導権を握られる苦しい展開だった。3-5-2の左ウイングバック(WB)で先発するも「相手サイドバック(SB)もサイドハーフもスピードがあってパワフルだったので、なかなか前に出られない状況は生まれるだろう」と予想していた通り、浦和に押し込まれて5バックで守るのが精いっぱい。「相手SBの背後を狙う意識はあったけど、前半は耐えるしかないなと思っていた」と苦しい戦いを振り返った。

それでも後半ラストプレーのPKで1-1に追い付くと、延長戦では運動量で相手を上回るようになる。「しんどかったけど、相手の体力が落ちていたのが明確だったので、自分たちの頑張り時だなと思っていた」とスイッチを入れると、延長後半終了直前には、右WBの守屋都弥(27)のクロスに飛び込んで決定的な場面を作った。「最後は決められなかったけど、ああいうシーンを作れたっていうのは、自分たちの体力の自信になる」。最後までタフに走り続けた両WBでのチャンスメークに、手応えを得た様子だった。

石川県金沢市出身。小学校卒業後に進んだJFAアカデミー福島で、東日本大震災を経験。能登半島地震が発生した元日には、地元で大きな揺れを感じた。そんな経験を持つ北川には、今大会で優勝して勇気を与えたいという気持ちがあった。そんな中でのハードワークだった。

「90分を過ぎて1-0で負けている状況でも、本当に最後の最後まで諦めないとチーム全員が意識して戦い抜いた結果が、延長につながって、最後はPK戦で勝てた。トーナメント戦は劇的な何かが起こるとわかっていたし、諦めない気持ちっていうのは、やっぱり大事だなと思った。優勝できて本当に幸せです」。被災地を思い、最後の最後まで走り続けた。【永田淳】