仙台大のDF山口歌子(4年)とDF山田萌々花(4年)は、2人とも大学でサッカーをやめるつもりだった。だが、今季から山口は兵庫のASハリマアルビオン、山田はスペランツァ大阪に加入する。アマチュア最高峰「なでしこリーグ」1部で、しのぎを削る。【取材・構成=木村有優】

高校でサッカー人生に終止符を打つつもりだった。山口は介護福祉士を目指し、仙台大に進学。黒沢監督や先輩たちの勧誘を受け「大学で終わりにしよう」と入部を決意した。就職活動が本格化し始めた昨年6月。サッカーを続けたい思いが残っていた。両親に相談すると「やりたくても続けられない人がいる中で、サッカーを続けるチャンスがあるのだから」と背中を押された。その言葉が決め手だった。「力尽きるまでやってみよう」と心に刻み、続ける選択をした。

大学での学びを新天地にも持って行く。昨年3月には大学選抜に選出され、大学女子日韓定期戦に出場した。「レベルが違いすぎました」と衝撃を受けた。それでも、トップレベルの同世代選手との活動は大きな刺激になり、収穫もたくさんあった。中でも「考えるサッカー」を取り入れた。「1つ1つの練習メニューを、実際の試合を想定してこなすようになりました」。ただ淡々とメニューをこなすのではなく、常に頭を働かせた。それからは、普段からのイメージが試合にも生きるようになった。

高校でやめるはずだった。「結局サッカーが好きなんだなと思いました」と笑顔で話した。さらに、高いレベルへの挑戦が始まる。「自分の武器であるスピードを生かしたサイドの突破、クロスを両足で上げられること、粘り強い守備などを1年目からみせていきたいです」と気合は十分だ。

同リーグに所属する山田とは、敵同士となる。お互い「すでに楽しみだね」と笑みをこぼした。対戦が待ち切れない。それでも、山口は「ピッチ外では変わらずに仲間です」ときっぱり言った。両チームの拠点、兵庫と大阪は車で2時間あまり。良きライバルであり、良き友でもある2人が、切磋琢磨(せっさたくま)で関西から全国へ、名をとどろかせる。

◆山口歌子(やまぐち・うたこ)2002年(平14)6月19日生まれ、新潟県新潟市出身。小学1年からサッカーを始め、女子チームのフェアリー、FC五十嵐ガールズを経て、小学5年から男子チームの南万代FCでプレー。中学、高校ではアルビレックス新潟レディースに所属。仙台大では1年からスタメンで出場。24年3月には女子大学選抜に選出。利き足は両足。好きな有名人は坂東龍汰。

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夢は子どもに関わる仕事に就くことだった。山田は大学で保育士、幼稚園教諭、小学校教諭の免許取得を目指し、実習も多々あった。「キャプテンなのに実習で抜ける機会が多くて、チームにたくさん迷惑をかけました」と葛藤の連続だった。実習期間は全体練習には参加しないため、技術面にも焦りを感じていた。

それでも、やれることはやってきた。「遅れを感じさせないために」とスキマ時間を利用。たとえ短時間でもグラウンドへ足を運び、ボールをひたすら蹴り、走り込みを行った。「みんなと同じようにはできないかもしれないけど、少しでも近づけるように意識しました」と自主練習を欠かさなかった。その背中をチームメートも見ていた。「同期に何度も助けられて、支えられたおかげでキャプテンをやり抜くことができました」と感謝した。

学生から社会人になるひとつの節目。サッカーをやめるタイミングは「ここだな」と思っていた。それでも、教員採用試験の1次突破後、黒沢監督から「サッカーを続けないか」と提案された。「チャンスがあるのに、ここでやめたら悔しい」と思い直した。「小さい頃からサッカー選手を見てキラキラしているなと思っていたので、今度は自分がそういう存在になりたいです」。次は自分の番だ。子どもたちの目を輝かせるために、サッカー選手であり続ける。

◆山田萌々花(やまだ・ももか)2003年(平15)3月2日生まれ、北海道東川町出身。小3時に男女チームの東川サッカー少年団でサッカーを始め、中学では東川中サッカー部と旭川女子アチーボでプレー。高校は北海道文教大明清の女子サッカー部に所属。仙台大では1年からベンチ入り。利き足は右。好きな有名グループはSixTONES。