今季、スペインリーグで最もセンセーショナルな活躍を見せているチームと言えば、スペイン・ビッグ3に割って入っているジローナだろう。その勢いはさながら、プレミアリーグ15-16年シーズンを制したレスターの再来のようだと、毎試合注目を集める存在となっている。

第14節を終了した時点での成績は、脅威の11勝2分け1敗の勝ち点35。27日にホームでビルバオと引き分けたことで連勝が5でストップ。ここまで唯一の敗北を喫した相手レアル・マドリードに首位の座を明け渡した。とはいえ、3位アトレチコ・マドリード(1試合未消化)および4位バルセロナに勝ち点4差をつけ、首位と勝ち点で並ぶ僅差で2位につけている。

■Rマドリードの14分の1規模

今季前半のジローナのサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)は、リーグ20チーム中13位の5197万6000ユーロ(約80億5628万円)。一方、トップのRマドリードはその14倍の7億2745万1000ユーロ(約1127億5490万円)。この差をもってして現在の順位を考えると、ジローナがいかにすごいことを成し遂げているかが分かるだろう。

カタルーニャ州北部に本拠地を置くジローナは、これまで常にスペイン1部リーグにいたわけではない。1930年創設で93年の歴史を持つクラブが、1部初昇格を果たしたのは17-18シーズンとつい最近のことだ。初年度は10位、翌18-19年シーズンは18位でセグンダ降格、1部に復帰した昨季は10位。この時点でも十分に優秀な成績であると言えるが、1部通算4季目となる今季、ここまでの大躍進を誰が予想できただろうか。

■シティーFCグループ所属で恩恵

今夏、主力選手であったオリオール・ロメウ、リケルメ、カステジャーノスらが退団したことで、今季の戦力が不安視されていた。そこでクラブはスペインリーグで今夏7番目に多額の2200万ユーロ(約34億1000万円)を投資し、ドフビク、ブランド、エリック・ガルシア、パブロ・トーレなどを獲得し補強に努めた。

さらにジローナの強みのひとつ、17年からプレミアリーグ、マンチェスター・シティを筆頭とするシティ・フットボール・グループに属したことで、多くの恩恵が受けられるのが他クラブとは大きく違う点だ。今季は同グループ傘下のトロワ(フランス)からサビーニョが期限付き移籍で加入、マンチェスター・シティーからヤンヘル・エレーラが完全移籍を果たし、ヤン・コウトが再び期限付き移籍で所属している。

このような補強を施したチームをうまくまとめているのが、ジローナ3季目のミチェル監督だ。起用する選手や相手によって巧みにシステムを変えて3-4-3や4-3-3(4-4-1-1)で戦い、時に攻撃での左右のバランスが非対称になることもある。

■DF陣が次々とオーバーラップ

縦への推進力、ハイプレス、強力なサイドアタックを武器に、前線の選手のみならず、DF陣も次々とオーバーラップする超攻撃的なサッカーを展開。7人が3点以上記録し、ビッグ3を上回るリーグ戦最多の32得点を挙げている(※PKでの得点は1回のみ)。

当然のことながら、この戦い方は守備面に大きな負担がかかる。そのため簡単にゴールを許すこともあり、失点は17と2位のチームにしては多い。だが、チームは自分たちの攻撃力に大きな自信を持っており、リードされても慌てることなく、ここまで逆転勝利を5回も収めている。

個々が自分に与えられた役割を全うしているため、特筆すべき選手を絞るのは難しい。敢えて各ポジションから挙げるとするならば、DFは今夏バルセロナから出場機会を求めて期限付き移籍で加入したエリック・ガルシア。守備のリーダーとなり、後ろからチームを支えている。

■注目サビーニョ4得点4アシスト

中盤ではオリオール・ロメウ退団の穴を見事に埋めているアレイシュ・ガルシア。リーグ戦で2番目に多いパス成功数を記録し、先月スペイン代表デビューを飾ったほど絶好調の選手だ。

チームで最も注目を浴びるのは、スペインリーグ屈指のドリブラーとして大ブレークしている左ウイングのサビーニョ。ドリブル成功数がリーグ戦で2番目に多く、4得点4アシストを記録。その活躍が評価され、来夏のパリ五輪に向けたU-23ブラジル代表にも選出された。年明け、五輪予選を兼ねた南米プレオリンピックトーナメントへの出場が濃厚で、ミチェル監督は約3週間、チームで最も違いを生み出す選手を失う可能性が高い。

クラブ史上最高額の移籍金750万ユーロ(約11億6250万円)で加入したセンターフォワードのウクライナ代表FWドフビク。ペナルティーエリア内で与えられたタスクを果たし、チームトップの7ゴールを挙げ、リーグ戦の得点ランキングで5位につけている。

■ミチェル監督は弱気?の発言

ここまでは素晴らしいパフォーマンスを発揮しているジローナだが、まだシーズンは3分の1を終えたばかり。先日リーグ優勝できると思うか?という質問を受けたミチェル監督は、やや弱気の発言をしていた。

「できるとは思っていない。我々は何も諦めてはいないが、Rマドリード、アトレチコ、バルサは勝ち点をほとんど落とさないと思うし、毎日が完璧でなければ優勝争いに加わることはできない。優勝は無理だと思うが、現時点では彼らと戦えるだけの力はある」

一見すると弱気にも聞こえるが、監督や選手だけでなく、クラブにとっても過去最高の成績にある中、冷静に現状を分析して発した指揮官ならではの言葉なのだ。

スペインリーグにおいて、ビッグ3以外のクラブが最後に優勝を飾ったのは、03-04年シーズンのバレンシアと、20年前まで遡らなければならない。そのため”レスターの再現”は現実的には非常に難しいことかもしれない。

■データが欧州CL進出へ後押し

一方、クラブ史上初となる欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得となると、それを後押しするデータが存在する。

それは「第12節終了時、10勝を挙げているチームはこれまで必ずトップ3以内でシーズンを終えている」というものだ(※ジローナはその段階で10勝、勝ち点31)。

さらにこれまで、その時点で勝ち点31を獲得したことがあるのはRマドリード(11回)、バルセロナ(6回)、Aマドリード(2回)、ベティス(1回)のみで、ジローナは見事5番目のチームとなった。過去20回の最終的な結果は、優勝13回、準優勝6回、3位1回。

また過去5シーズン、欧州CL出場圏内の4位になったチームの平均勝ち点は70というデータもある。これはジローナが最初14節で手にした勝ち点35を、残り24節で再び獲得すれば、Rソシエダードやベティス、ビルバオなどといったライバルを抑え、欧州最高の大会に出場する可能性が非常に高いことを示している。

■見る者をワクワクさせる攻撃力

今後、上位チームとして対戦相手から徹底的に研究されることが予想され、これまでのように勝ち続けることは難しくなっていくと思われる。しかし、見るものをワクワクさせる超攻撃的なサッカーは、何か大きなことをやってくれるのではないかと期待してしまう。今シーズン、ジローナのサッカーを楽しむ時間はまだまだ残されている。【高橋智行通信員】

(スペイン発サッカー紀行/ニッカンスポーツコム・コラム)