サッカー、セルビア代表のアシスタントコーチを務める喜熨斗(きのし)勝史氏(58)が、欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦の行方を占う。
22年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、ストイコビッチ監督の右腕としてベンチ入り。指導者として世界トップレベルを体感してきた同氏が、まずは7、8日(日本時間8、9日)に行われる4試合を独自の視点で分析した。
【取材・構成=菅家大輔】
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【チェルシー-ドルトムント(7日=日本時間8日)】
第1戦はチェルシーが攻めまくったにもかかわらず、ドルトムントのアデイエミの1発でやられました。ドリブルで独走して数少ないチャンスをつかんだ。あれもサッカーですね。チェルシーががっちり守ってカウンターで得点を奪うモウリーニョ監督の時代のようなサッカーをドルトムントにやられた感じでした。
チェルシーは今年に入って勝利は1月15日のクリスタルパレス戦のみ。次のドルトムント戦がポッター監督にとってもラストチャンスになるかもしれない。故障者も多く、スターリングが戻ってきて、ペリシッチあたりも戻ってきてどれくらいできるかがポイントですね。チェルシーとしてはホームで先に点を取って2試合トータルで1-1に持ち込めると面白いと思います。
ドルトムントの注目は、アデイエミが21歳、ベリンガムが19歳、交代で出てきたギッデンスは18歳という部分です。この年代の3人がこのレベルで出場できているのが日本では考えられない。18歳なんて、日本では高校選手権に出ている年齢です。でも、これが世界なんですよね。それを分かってもらいたいです。
ドルトムントは第1戦であれだけ攻められて守り切ったので、それを考えたらホームでも守りからスタートする可能性はありますね。チェルシーをどのように押さえてカウンターにつなげるかを考えればいい。
私もW杯カタール大会でベンチ入りし、W杯というものを体験して実際に分かったのですが、W杯はお祭りです。1つの国が良い選手を作るにはW杯で勝つだけでは十分ではない。CLなどに安定的に良い選手をたくさん出すことが大切なのではないかと。良い組織をつくるためには、CLにのような舞台に多く選手を出すことも必要だと強く感じます。
【ベンフィカ-クラブ・ブルージュ(7日=日本時間8日)】
第1戦を見て、ベンフィカは良いチームだと感じました。うち(セルビア代表)の選手DFリスティッチはベンチ外でスカウティングにはならなかったのですが、第1戦もアウェーのベンフィカが圧倒的だったので、第2戦はホームに戻るベンフィカが圧倒すると思います。勝ち上がったベンフィカが次にどこと当たるのかが楽しみですね。ポルトとのポルトガル・ダービーのような形になれば盛り上がること間違いなしです。
【トットナム-ACミラン(8日=日本時間9日)】
1戦目は典型的なミラーゲームでした。3-4-2-1同士で少し様子を見ながら入りましたが、7分にACミランの23歳のFWディアスが得点しました。そこから試合に動きが出てくるかなと思ったんですが、トットナムもさほど動きがありませんでした。トットナムとしては、1点取られてパニックになって攻めて攻めて裏を取られて2点目を許してしまうと2戦目が苦しくなることを見越したかも知れません。落ち着いた感じでした。
トットナムは本拠地で迎える2戦目で2点取る必要があるのでどれだけアグレッシブに来るか。ミランは前線のディアス、レオンの23歳コンビの前にジルー(36歳)がいる。そのトライアングルがどのようにトットナムのDFラインを崩すか。現在ミランは4連勝中で勢いついてきたので、トットナムがどう止めるか。トットナムはFW孫興民(ソン・フンミン)とケーンの2トップがどれだけ攻撃力を発揮できるか。ダイヤ-の出場停止、ミラン戦の欠場組が戻るかもしれないが、メンバーをどれだけ変えてくるか。頭から攻めるのか、途中まで様子を見るのか。
ミランも守らず普通に来ると思います。見どころはトットナムが先に得点して2試合トータルで1-1に追いついて、ガチガチの打ち合いを見せてほしいと思います。
【バイエルン・ミュンヘン-パリ・サンジェルマン(8日=日本時間9日)】
第1戦はPSGが守り、メッシも守った。本当に意外な展開でした。いざ、カウンターで攻めてもメッシ、ネイマールがガチガチにマークされて動けなかった。むしろ、Bミュンヘンが個の力を含めパスを回しまくることができた。それも予想外だった。エムバペが途中出場だったけど、次は頭から出るかもしれないですね。第1戦もエムバペが出てきたら攻め始めましたから。
一方でBミュンヘンはベテランのFWミュラーを最後に入れて試合を落ち着かせた。試合巧者だったかなと。あの時間帯でミュラーを入れてくる選手層が素晴らしい。逃げ切るために後ろや中央を厚くするのではなく、あえて前線にサッカーを知っている選手を入れて試合を落ち着かせるという采配の意図が明確で、指導者目線だと面白かったですね。
第2戦に向けて、Bミュンヘンはサネ、マネが頭から出てくるのはないかと思うので見てほしい。現在、ブンデスリーガで1位ですが4位まで勝ち点が密集しているので、CL以外にも次のリーグ戦を考える必要が出てくるかもしれません。そのあたりをどのようにマネジメントしてくるかが楽しみです。
第2戦はBミュンヘンがホームで固くかっちり来る可能性があるので、PSGがそれを崩すのは難しいかなと思いますが、先にPSGが点を取って2試合トータルで1-1になると面白いですね。
(セルビア代表アシスタントコーチ)
◆喜熨斗勝史(きのし・かつひと)1964年(昭39)10月6日生まれ、東京都出身。日体大卒業後、関東1部リーグでFWとしてプレー。教員をへて、東大大学院総合文化研究科に入学。97年に平塚(現湘南)でプロの指導者に。C大阪、浦和、大宮、横浜FCでフィジカルコーチを歴任。04年以降、カズ(三浦知良)のパーソナルコーチを務める。ストイコビッチ監督とともに、08~15年8月まで名古屋でフィジカルコーチ、同年から19年まで中国1部広州富力、21年3月からセルビア代表アシスタントコーチを務める。

