大学陸上界の「二刀流」が東海大を悲願の初優勝に近づけた。4区で館沢亨次(3年)が1時間2分37秒の区間2位の快走を見せ、順位を4位から2位に押し上げた。チームはその後の5区でも首位の東洋大を追い上げ、1分14秒差の2位で往路を終え、出場47回目にして初優勝を狙える位置につけた。

海風を受けながら残り6キロで加速していった。18・6キロ付近で、前を行く青学大を捉え、ぐんぐんと突き放し、前を追う。口を開けて力を振り絞りながら、ゴールテープ前では右拳を握ってガッツポーズで声援に応えた。「今やれることはしっかりやり切った」とチームを通じてコメントを出した。

ジャカルタの夏、日の丸を背負った。種目は6月の日本選手権で59年ぶりの2連覇を飾った1500メートルだった。結果は9位と奮闘。そこからが大変な調整が待っていた。「箱根に向けて練習しようと思っても、最初はできて1000メートルのインターバルくらいだった。まったく駅伝練習についていけなかった」。1500メートル仕様に仕上げた体は長距離練習についていけなかった。「箱根の16人にも入れないなという先が真っ暗な状況でした」と振り返る。

違いの1つは体重にある。「1500メートルはパワーと重さも必要」とアジア大会時は64キロ。これを減らしていく作業が必要だった。「肉体改造」を諦めずに続け、地道に走行距離も増やし、なんとか秋からの駅伝シーズンに間に合わせた。

なぜ、駅伝だけではなく、1500メートルに出場し続けるのか-。「1500メートルをやっている中学生や高校生はたくさんいる。長距離か1500メートルかを絞る必要がないということを証明できたらいい。どっちかを諦める選手が多いんですけれど、その必要はないと思う」。二刀流で新たな可能性を切り開きたい。

この日は髪型も“新境地”だった。直前に床屋で「サンドウィッチマンの伊達さんの髪形にして下さい」。退部になるため金髪にはしないが、「ちょっと古いヤンキー風。ワイルド系ととらえてもらえたらうれしい」と離していた。海風にも動じないワイルドな走りで、二刀流を体現してみせた。