国学院大が6位だった往路最高順位を3位に更新した。今季のスローガン「歴史を変える」を文字通り実行できたのは、5区(20・8キロ)で浦野雄平(3年)が1時間10分54秒、区間新の大躍進を見せたからだ。

スピードアップすると決めていた残り約9キロの小涌園前で、右ふくらはぎがつる。想定外の展開に、今度は頭をフル回転させた。痛めた部位は「ギリギリの力加減」に抑え、痛みのない太ももと尻の力で山道を蹴った。残り約5キロ、下り始める芦之湯では左ふくらはぎもつった。それでも、5区では史上初の1時間10分台を出した。

走りたかった2区は主将の土方に譲り「全く希望しなかった」5区を11月末に言い渡された。山の準備は皆無だった。つま先で蹴る平地の走り方とは別に、効率の良い登り方を研究。尻の力を足裏中央に伝えて踏み込む走法を見つけた。

前田康弘監督は「本当に頭の良い選手。自己プロデュース力がすごい」と評す。練習メニューも監督と対等に議論。大会10日前には、調子が上がらない浦野に心配で声を掛けると「これでいいんです」と言われた。山登り対策で体重を落としていた最中だった。

「世界を見ればもっと成長できる」と前田監督は昨年4月、スイスで行われた世界大学クロスカントリーに出場させた。結果は6位。2人で密かに持つ目標はトラック種目での24年パリ五輪への出場だ。

5区の区間新を出せばついて回るのが「山の神」という称号。しかし、「(距離が長かった)歴代の神よりはかなり劣る。謙虚な姿勢で行きたい」と遠慮がちに話した。【三須一紀】