先日、プリンスホテルが主催するアイスショー「プリンスアイスワールド」を、KOSE新横浜スケートセンターで観た。このショーに出演している、アスリート仲間の小塚崇彦さんに誘っていただいた。


 今年2月の平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックにおける羽生結弦選手、宇野昌磨選手の活躍も記憶に新しい。「フィギュアスケート競技」を知らない人はいないだろう。


 私も東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の一員として現地に行った。冬季オリンピックの現場に立ち会ったのは初めてだった。間近で冬季競技を見ることはとても新鮮だった。同じオリンピック競技でも、季節が異なることで印象が大きく変わることを知った。

 氷上の滑らかなステップ。雪山で滑り抜く迫力。たくさんの感動をもらい、選手の卓越した能力を感じた。それから3カ月が経とうとしている。早いものだ。

 競技としてのフィギュアスケートを少し想像して、プリンスアイスワールドに足を運んだが、全く別の印象を持つことになった。

 このショーは1978年から行われていて、今年で記念すべき40周年だった。何事も信念を持って進むのは難しい、ましてや時代を刻むことも。

 その中で数々の偉大なフィギュアスケーターが出場してきたこのショーはまさに、エンターテインメントだった。

 競技からは少し離れ、オーディエンスとの一体感を感じる時間だった。

 ショーに出場するアーティストは、ゲストとキャストに分かれる。

 ゲストには小塚さんを初め、安藤美姫さんら現役を引退したオリンピアンが豪華に揃う。そして現役の選手も加わる。そこがまた素晴らしかった。平昌オリンピック銀メダリストの宇野昌磨選手がリンクに姿を現した時は、大きな歓声に包まれた。同じく平昌代表だった坂本花織選手も素晴らしかった。

 また、キャストと呼ばれるアーティストは、元々競技のフィギュアスケートで頂点を目指していたスケーターが多くを占める。普段はインストラクターなど、おのおの仕事を持っている。

 プリンスホテル主催でオーディションを行い、合格者はショーの練習をする。PIWチームメンバーと呼ばれる。

 全部で30人弱。このスケーターたちが、ショーを盛り上げる。


 私は、こんなに多くの引退したスケーターが活躍できる場があるとは、何と素晴らしいんだと感じた。

 小塚さんに聞くと、「現役を引退した選手の活躍の場を広げたい」と話す。このショーの一つの魅力ではないかと思う。

 「僕の軸は普及なんです」

 フィギュアスケート界で数々の好成績を残した小塚さんはいう。

 引退後すぐに、自分が社会にできる役割をここまで話せる元アスリートは多くはないだろう。

 「このショーの魅力は、ファンと触れ合えるところなんです。だから僕は、このショーに出場しています」


 エキサイティングシートと呼ばれる特別な席がある。

 その席を購入したファンは、ショーが終了した後、出演者と直接会って、写真が撮れたり会話することができる。

 小塚さんは誰よりも長くリンクに残ってファンたちと写真を撮ったり、話したりしていた。


 「軸」があることは武器だ。

 どんなことをやるにも、行動がその軸につながる。

 このプリンスアイスワールドを観に行ったことで、一生懸命頑張ってきたアスリートたちが、ずっと輝いていける場所があることに感動した。それと同時に、小塚さんを通して、引退後も自分を持って活動を続けるアスリートたちがたくさん増えて欲しいと願った。


 誘っていただき、心から感謝します。


(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)