6月7、8日と7月5、6日の2回にわたり、鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)の本番に向けた合同テストが行われた。
このテストは、本戦前に鈴鹿サーキットを実走できる貴重な機会となっている。各チームはここでマシンセッティングを詰めていく。
記者は07年に当時、鈴鹿8耐や全日本ロードに参戦していた大阪の「DDBOYS」というチームに密着取材を試みたことがある。チームファクトリーでの作業や合同テスト、そして鈴鹿8耐本番とめくるめくような体験をさせてもらえた。その中で、最も強く記憶に残っているのが、レースでのタイヤ交換作業を手伝わせてもらったことだ。
8耐では多くのチームが8スティント(実走の区間)と7回ピットインの戦略をとる。1回のピットストップにかかる時間は十数秒。この短い時間で、給油と前後タイヤ交換を行う。一連の作業のどこかで大きくつまずけば、大幅なタイムロスとなり、結果順位を落とすことにもなりかねない。合同テストは、レース本番と同じ環境でピット作業の練習を行える重要な機会でもあるのだ。
給油作業は2人で行う。耐久レースのバイクには2口の給油口が備わっており、一方からガソリンを入れ、他方から燃料タンク内の空気を抜くようになっている。ちなみに給油するためのタンクは特注品。縦に細長い円筒形で、下がすぼんだ形をしている。これは見た目のゴツさとは裏腹に、かなり軽量に作られている。記者も持たせてもらったことがあるが、びっくりするほど軽かった。
とはいえ、満タン分+αのガソリンを詰めた給油タンクはそれなりに重い。給油担当者は厳重な防火服を着て炎天下のピットレーンで作業しなければならず、それだけでも非常につらい。しかも給油タンクは傾いた状態だと給油がスムーズにいかなくなるため、きちんと垂直にして給油口に当てなければならないのが大変だと聞いた。
タイヤ交換は前後それぞれ3人ずつが担当する。マシンがピットインすると、前後の1人ずつがスタンドをかけ、もう1人ずつがアクスルシャフト(車輪に通る固定用の軸)をインパクトレンチで外し、スタンドをかけた人がタイヤを抜いて後方に待機する「受け」の人に抜いたタイヤを送り、新しいタイヤをセットしてアクスルシャフトを締め戻す、という流れ。記者はフロントの「タイヤ受け」を担当した。
渡される(投げられるといった方が近い)タイヤをただ受け取るだけと侮ることなかれ! 2輪のタイヤは4輪と違って断面が丸くなっている。そのため、股の間から投げられたタイヤは、ラグビーボールのようにあさっての方向に飛んでいきかねないのだ。アドバイスされたのは、腰を低く構え、待つのではなく、自分から捕まえにいくこと。テニスのラインジングショットのように、1バウンドした直後の上がり際を押さえられればタイヤを倒すことなくキャッチできる。
外したタイヤはピット内に一時保管するが、ここでも気をつけなければならないことがある。タイヤにはホイールとともにブレーキディスクが装着されている。1スティントで酷使されたディスクは、触るとやけどするほどの高熱を帯びている。ピット内にはガソリン缶など燃えやすい物も置かれており、うっかりその近くに放置してしまったら大惨事になりかねない。そういった細かなことにも気配りが必要なのだ。
ライダーの奮闘に応えるべく、さまざまな工夫と努力で、短時間かつ正確に作業を遂行するピットクルーたち。8耐本番では、そんなピット作業に注目して観戦してはいかがだろうか。
◆大津賢一(おおつ・けんいち)神奈川県秦野市出身、92年入社。整理部→電子メディア→整理部と内勤畑を渡り歩き、現在は報道部で釣り担当。幼少期から父親の影響で車好きに。学生時代にF1やルマン24時間レースなどをテレビ観戦し、その魅力に取りつかれる。94年からポッカ1000kmレースをほぼ毎年観戦。電子メディア時代には鈴鹿8耐取材や大阪の2輪レースチームの密着取材などを経験した。。(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)







