<高校ラグビー:佐賀工38-12仙台育英>◇28日◇1回戦◇花園

 佐賀工が伝統の力で強豪・仙台育英(宮城)を粉砕した。「1回戦屈指の好カード」と注目された一番、佐賀工は伝統のFWで徹底勝負。後半5分にモールで40メートル押し切るなど、押しまくって計6トライを奪い快勝。19大会連続で初戦勝利を飾った。

 ある意味、珍プレーだった。後半開始直後、敵陣10メートルライン付近から押し始めた佐賀工のモールが崩れない。必死に止めようとする仙台育英をずるずる後退させながら、バックス陣も加わっていったモールは巨大化。最後は12人にまでふくらみ、40メートルを押し切った。「モールにこだわったら、どこまでもいける」。枝吉巨樹監督(37)は佐賀工「伝家の宝刀」を誇った。

 バックスで展開するゲームプランを変更した。前半5分もモールを押し込み先制トライ。「FWが通用するんで切り替えた。こだわった方が勝てる」。観客席からの「おっせー、おっせー」のかけ声にも乗り、徹底してモールで押した。枝吉監督が「もう少し僅差になるかと思っていた」と警戒した仙台育英に圧勝。最後は控え選手を7人投入する余裕の展開になった。

 モールを「伝統として意識してます」とプロップの江島佑太主将(3年)は言う。その伝統は練習に息づく。たっぷり汗を流した後の締めは必ずモール。FW8人で、20人近くを相手に押すこともある。意識するのは「結束力」。約20人の相手に回されても、バインドを固めて隊形を崩さない。「自分から見てもFWに団結力があったんで」と江島主将。日々の努力があって、40メートルを押し切れた。

 今年、トップリーグのヤマハに所属するOBの山村、中園が教育実習で訪れ、チームで行う「レスリングトレ」を残していった。低いタックル中心だが、体幹強化でモールの安定にもつながったという。「モールには自信あります」。江島主将が胸を張った武器が、19大会連続の初戦勝利をもたらした。【実藤健一】