あと2勝-。6大会ぶりの優勝を狙う桐蔭学園(神奈川)が常翔学園(大阪第2)を下し、2年連続で4強入りを果たした。高校日本代表候補のCTB斉藤大朗(ひろあき、3年)が攻撃の起点となり、勝利に導いた。

 「東の横綱」としての意地を見せた。斉藤が14点リードの前半23分、敵陣10メートルのラックから意表を突くキックパスを出し、FB黒木のトライを演出。華麗なプレーに約1万4000人の観客が歓声を上げた。このワンプレーを機に、流れが一気に桐蔭学園に傾いた。「一瞬のプレーが勝敗を左右するので勝ちにつながって良かった。スペースが見えて自然と蹴りました」。試合後、斉藤は誇らしげに振り返った。

 苦悩の日々が続いた。2回戦の流通経大柏(千葉)戦でゴールを6本中5本外した。3回戦は微熱で欠場したが“負の連鎖”が続き、WTB加藤とSH小西が8本中7本外した。

 「考えすぎ」。先月31日と2日の調整で同行しているメンタルトレーナーからこう指摘された。この言葉で吹っ切れた。「やることをやって、入らなかったらしょうがない。キックを外しても他のプレーに影響しないようにしないといけない。キックはキック。プレーはプレー」。これまで曖昧だった蹴る位置も、後方に4歩、左斜め70度に3歩と歩幅を固定した。全体練習では8割以上ゴールを決めた。

 この日は特訓の成果もあり、キック8本中5本(3G、2PG)を決めた。「今日は風の流れで外したのもあったけど、切り替えて出来た。ヒットしているし良い感じです」と前向きに言った。右足を負傷していたロック高橋も復帰して高校日本代表候補5人を含むフルメンバーの「ガチンコ」で臨んだ。

 5日の準決勝の相手は、前大会決勝で敗れた因縁の東海大仰星(大阪第1)だ。昨年の夏合宿では接戦の末、勝利したが、藤原秀之監督は「ゲームでストーリーを作ってくる。前回とは比べものにならないぐらい力をつけている。FWがしっかり戦ってくれないと大量得点につながる」と警戒した。斉藤も「花園の借りは花園で返す。絶対に勝つ」と雪辱を誓った。

 試合以外は報道陣含め、マスク着用が絶対の桐蔭学園。試合外の一瞬の隙も見せずに初の単独優勝を狙う。