兵庫・姫路市を拠点として16年に設立されたバレーボール女子のプロチーム「ヴィクトリーナ姫路」が17日、同市内で記者会見を開いた。前女子日本代表監督の真鍋政義ゼネラルマネジャー(GM=53)と橋本明社長が出席。昨季2部相当のV・チャレンジリーグ1に所属していた「仙台ベルフィーユ」からのチーム譲渡が、1度承認されたものの無効となった経緯について説明した。

 仙台は財務状況の悪化で、6月22日にチーム運営会社「トゥエルヴ」が、日本バレーボール機構(Vリーグ機構)からリーグ退会に当たる退社勧告を受けた。そこから姫路と仙台がチーム譲渡に向けて協議して合意。7月29日の同機構臨時理事会を経て、8月1日に承認が発表された。ところが「両チーム間で合意がなされた内容と事実に違いがある」(同機構)として同9日の理事会で審議された結果、譲渡の無効が同10日に発表されていた。

 この日の会見ではまず、真鍋GMが「仙台の選手たちにバレーボールを続ける機会を提供できないかという思いで、選手全員を受け入れる提案をさせていただいた。我々も統合することで選手の補強ができ、チャレンジリーグ1から出場できるメリットがあった。今後は当初の予定通り、1つずつ(Vリーグ準加盟から)ステップアップしていきたい」というスタンスを表明。橋本社長が経緯の説明を行った。

 姫路によれば昨年12月、トゥエルヴの米田隼人社長から「財政的に厳しい。一緒にチームを運営できないか」と打診があった。協議を重ねて1度は合意。ところが仙台では、チーム保有団体のNPO法人「仙台ベルフィーユ」が新体制となり、同団体の理事長も兼ねていた米田氏が解任され、荒谷敏氏が新理事長に就任していた。これにより「仙台でスポンサーを集めて、宮城県での活動を継続していく」と姫路に伝えられ、4月20日の時点で白紙となったという。

 しかし、6月に仙台がVリーグ機構から退社の勧告を受けたことで事態は一変。姫路から仙台へ「選手の受け入れをさせていただきたい」と打診した。7月8日に仙台の全選手とスタッフへ、姫路がチームの説明や選手の受け入れ条件を提示。同22日に仙台の8選手と個別面談を行った。姫路の橋本社長は「スケジュールの中で(移籍人数の)最終確定までできず『6~7人』という合意で(譲渡の申請をしたことが)このような結果になった。(仙台側へ)十分なご理解をいただける説明ができなかった」と説明。曖昧な状況でVリーグ機構へ譲渡の申請が行われ、まずは8月1日に同機構から承認が発表された。

 一方の仙台は8月2日にVリーグ機構から発表された「移籍公示リスト」において「引退した選手も含め、すべての選手が姫路へ変更という表現の発表があり、事実と異なっている」として、翌3日に同機構へ質問。4日に同機構の嶋岡会長から「今回のチーム譲渡については、8人の選手が姫路へ移籍することが条件」と「初めて」(仙台側)伝えられたという。そこで同日、同機構に質問・要望書を送付。同8日に同機構へ招集され「8人の選手・スタッフが姫路へ移籍しなければ(譲渡を)認められない」と正式に伝えられた。仙台側は譲渡無効が発表された10日に書面で「チーム間では3人の選手が姫路へ移籍することが決定していましたが、他の選手については、他のVリーグ加盟チームへの移籍について協議が進められているところであり、姫路への移籍は想定していないと(8日にVリーグ機構へ)伝えた」と説明。姫路の認識とも食い違いがあった。その結果、譲渡無効になっていた。

 仙台は同書面で「今回の件につきましては大変遺憾であり、Vリーグ機構には、チーム譲渡について適時に正確な情報を提供いただくとともに、両チームの間に入り、積極的にチーム譲渡についての指導をいただきたいところでした」と意見している。同時に「一から本当の意味での地域に根ざした、安定した財務状況が確保できる新しいチームを発足するために、関係機関との協議を重ねてまいりたいと考えております」と今後について説明した。

 姫路の橋本社長は「最終的な結果が出たことは真摯(しんし)に受け止めさせていただいて、リーグ等に我々が不服や申し立てをすることは一切考えておりません」と話した。

 なお、姫路は、仙台から高橋咲妃恵(24)と逆瀬川由衣(24)の両ウイングスパイカーと、ミドルブロッカー浜辺優愛(18)の加入を発表した。