日本トライアスロン連合(JTU)五輪対策チームの中山俊行リーダー(54)は、大会を振り返って「女子はレベルが上がっているが、男子は五輪のスタートラインに立てる状況ではない」と、厳しい評価を下した。今大会限りで一線を退く田山寛豪(35)を倒す若手は現れず、ベテランが11回目の優勝。「危機感があるのは確か」と話した。

 この大会にコンディションを合わせてきた田山に対し、連戦疲れもあった若手は「不利な面はあった」と認めた。長く日本男子を引っ張ってきた田山のレースを「実力も戦略も素晴らしかった。本当に尊敬できる選手」と絶賛したが、それでも「もうちょっと食らいついていってほしかった」と本音をもらした。

 リオデジャネイロ五輪でも3人を送り込んだ女子に対し、男子は田山1人だけだった。東京五輪で初採用される混合リレーは男女各2人だが、今の日本男子のレベルではリレーを組むことさえ難しかった。

 日本にとって朗報は、国際トライアスロン連合(ITU)が開催国枠設定を決めて国際オリンピック委員会(IOC)の承認を待っているというニュース。正式決定すれば男子2人の出場枠が確定する。中山リーダーは「日本にとって大きい」と言いながらも「もっと男子の底上げをしないと苦しい」と、厳しい現状を口にした。

 残り2年半、大胆な強化策も用意している。所属の枠を外し、甲府に拠点を置いて集中強化。今年3月に招へいした多くの世界トップ選手を育てているカナダ人コーチのパトリック・ケリー氏を男子専任とするプランだ。「今までと同じことをやっても強くはならない。反対はあるとは思うけれど、思い切ったことをやらないと変わらない」。80年代に黎明(れいめい)期の日本トライアスロンを引っ張り「ミスター・トライアスロン」とも呼ばれた中山リーダーは、現役時代の情熱そのままに熱く話していた。