女子ショートプログラム(SP)首位の宮原知子(19=関大)がフリーも1位の143・31点を出し、合計214・03点で15年NHK杯以来のGP2勝目を挙げた。左股関節の疲労骨折から復帰2戦目で自己ベストまで4・30点に迫り、今季の最高得点でも日本人2番手と大きくステップアップした。
忘れたように一瞬の間を置き、宮原のガッツポーズが出た。笑顔で得点表示を待ったキス・アンド・クライ。まずは好演技の坂本を上回るスコアに「まさか優勝できるとは思ってもみなかった。すごくうれしい気持ち」と頭を整理し、照れ笑いしながら上げた右手で、大歓声を受け止めた。
自身と周囲の不安が吹き飛んだ。約11カ月ぶりの復帰戦だった2週前のNHK杯フリーで、2カ所あったジャンプの回転不足はゼロ。7つのジャンプは全て加点を導き、再発防止で練習量を減らしたことによる体力不足を克服した。浜田コーチは「日に日に体に力が付いてきたのを感じた」。当たり前のように3つのスピンとステップで最高評価のレベル4を受け「試合になかなか出られなかったけれど、イメージトレーニングをたくさんした」と体と心がかみあった。
リハビリ期間中には、体重が38キロから2キロ増量。一方で体脂肪率は1桁台をキープし「これまで3歩必要だったのが、2歩でいけるようになった」とスケーティングが伸びるようになった。演技構成点の5項目では、昨季でさえ1度もなかった9点台(10点満点)を「演技表現」と「音楽の解釈」で記録し、故障前からの成長も堂々とアピールした。
今大会の優勝でシリーズ出場2戦のポイントは7位に浮上。1位でGPファイナルに進んだメドベージェワ(ロシア)は右足中足骨にひびが入っている状態で、仮にファイナル欠場となれば、繰り上げ出場の可能性まで出てきた。大会後は北米に1週間残り、SPとフリーの振付師とプログラムの手直しに着手する。完全復活を遂げた女子のエースは「この試合でどんどん点数が伸ばせるという自信になった。もっといいプログラムにできるようにしたい」と手応えを胸に、全日本選手権(12月21日開幕、東京)へ力強く歩み出す。
◆日本女子の五輪代表争い 全日本選手権前の国際スケート連盟公認大会を終え、樋口が頭1つリードしている。日本勢唯一のGPファイナル進出がこの日決定。今季に絞れば日本勢最高得点を持ち、世界ランクでも坂本(全体4位)に次ぐ日本勢2位(同8位)に位置する。全日本選手権3連覇中の宮原は、今季を含む過去3シーズンが対象の世界ランクで日本勢最高位の5位。三原、本田らは全日本選手権優勝での代表入りが現実的な目標になる。
◆宮原知子 みやはら・さとこ。1998年(平10)3月26日、京都府生まれ。4~7歳は米ヒューストンで暮らし、6歳で競技開始。12年全日本選手権で3位に入り、GPファイナルは15、16年と2年連続2位。218・33点の自己ベストは女子世界歴代5位。151センチ。