ジュニア男子シングルスで張本智和(エリートアカデミー)が史上最年少14歳205日で初優勝を飾った。決勝は宇田幸矢(16)を3-0のストレートで撃破。計6試合、1ゲームも落とさない完全優勝で、04年1月の水谷隼の14歳221日の最年少記録を16日上回った。世界ジュニア制覇直後の昨年は準々決勝で敗退。心身両面の進化で、まずは今大会1冠を達成した。この日は一般男子シングルス、ダブルスの初戦も快勝。目標の3冠に突き進む。

 天井に拳を突き上げ「チョレイ」と心の底から叫んだ。今年初の「ハリバウアー」。昨年は準々決勝で敗退したジュニア男子シングルス。張本は全6試合、1ゲームも落とさない完全制覇に「待ちに待った優勝ができてうれしい」と喜びを爆発させた。

 決勝の宇田戦。1-0で迎えた第2ゲームに1年間の成長が垣間見えた。1-7と大幅にリードされても焦らない。変幻自在のサーブを駆使。得意のバックと、1年で磨き上げたフォアで冷静にコースを打ち分けて一気に逆転。最年少優勝への勢いをつけた。

 世界ジュニアを最年少で制した直後の昨年大会。優勝が当然の雰囲気が重圧になる。準々決勝でリードを許すと、動揺を隠せない。幼少時から格上、年上を倒し、国内では勝つことが当たり前。だからこそ、同年代に対して劣勢になると、心を乱した。敗退後は涙に暮れた。

 悔しさは卓球台にぶつけてきた。朝と夜の自主練習は欠かさない。フィジカル強化で体脂肪率は10%から8・3%に減った。「弱点を指摘すると、徹底してやる。努力魂がある」と男子日本代表の倉嶋監督。サーブの威力は増し、縦、横回転だけでなく逆回転も習得した。昨年は世界選手権ベスト8、ワールドツアー優勝で結果を残し、メンタルも強化。倉嶋監督は「どんな悪条件もねじ伏せる力がついた」と1年の進化を分析した。

 ジュニア制覇後は一般の男子ダブルス、シングルス4回戦に出場し快勝。混合ダブルスはすでに優勝を逃し、目標は3冠。昨年の女子シングルスは16歳平野が優勝したとはいえ、技術だけでなく、パワーも必要な男子。中学2年生の優勝となれば、常識を超えた偉業になる。「ジュニア優勝はうれしいが、一般で勝たないと意味がない。今の勢いならきっと(3冠は)できる」。堂々と宣言した14歳に、過去の常識は関係ない。【田口潤】