女子フリーでショートプログラム(SP)2位の坂本花織(17)がフリー1位の142・87点をマークし、合計214・21点で初出場初優勝を果たした。SP、フリー、合計で自己記録を更新し、平昌五輪(ピョンチャン・オリンピック)に弾みをつけた。2連覇を目指したSP3位の三原舞依(18=いずれもシスメックス)が2位に入り、同五輪代表でSP首位の宮原知子(19=関大)は3位。日本女子の表彰台独占は13年の浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子以来、5年ぶり2度目となった。

 真っ暗な場内に、明るく照らされた表彰台。坂本はその頂上に立ち「どこ見ていいか分からへん」と目をキョロキョロとさせた。小一時間前、両拳を豪快に振り下ろすガッツポーズと、心の中の「よっしゃ!」の叫びで締めくくった演技。「2回だとまぐれと思われる」と言い続けた合計210点超えを3戦連続に伸ばし「ちょっとだけ自分を褒めようと思います」と心地よい余韻に浸った。

 演技前の足は震えていた。高さのあるフリップ-トーループの連続3回転に始まり、全てで加点を導いたジャンプ。右足にできたうおのめの痛みもどこかへ吹き飛んだ。昨夏、難しさのあまり何度も涙したステップは最高評価のレベル4。中野コーチからは「大きく滑るようになった。(普段は)まだいろんなところが小学生。でもちょっと、中学生になったかな」と褒め言葉を引き出した。

 無邪気な表情の裏に、頂点へのこだわりはあった。「(連覇の)阻止? ちょっとは…」と明かしたのは勝負師の本能だ。昨年2月、同門の三原が4大陸選手権で優勝する姿を神戸市内の実家でテレビ越しに見た。五輪代表有力候補へと一気に駆け上がった心の友を「さすがだな」とたたえる一方、シニア転向が決まった昨春は人知れず悩んだ。

 「自分には経歴がない」

 厳しさと優しさを持つ「お母さんみたいな」中野コーチにはそう、つぶやいた。“第2の母”は「そんなことないよ。ジュニアにしたら、最高の経歴だと思うよ。ちゃんと頑張れば、シニアでも戦えるよ」とそっと背中を押してくれた。昨季は全日本ジュニア選手権優勝、世界ジュニア選手権3位。シニアの陰に隠れた歩みを認めてくれる、優しい声を励みに踏ん張った。

 他の日本人選手を大きく上回る今季10試合目。試合翌日も体の疲れを抜くことなく、次の試合に向けた通常練習で鍛えてきた。その苦労も、表彰台の景色は吹き飛ばしてくれた。「1桁」と言っていた五輪の順位目標は「片手ぐらい」に前進。勢いではなく、努力の証しを平昌でぶつける。【松本航】