「野獣」が華麗なる転身を遂げる。12年ロンドン五輪柔道女子57キロ級金メダルの松本薫さん(31=ベネシード)が7日、都内で引退会見に臨んだ。27年間の競技人生では完全燃焼を強調し、第2の人生として「アイスクリーム作ります!!」と電撃発表した。今後は、ベネシードが新規事業として12日に東京富士大構内にオープンさせるアイスクリーム店にスタッフとして携わることを明かした。

「野獣劇場」だった。報道陣100人超が集まった会見場に、松本さんはベージュのパンツスーツ姿で登場した。冒頭、「本日は寒くない中…」と意表を突くあいさつで笑いを誘った。引退後の第2の人生を問われると「アイスクリーム作ります!!」と、真剣な表情で2度繰り返した。

ベネシードが12日に東京富士大構内にオープンさせるアイスクリーム店にスタッフとして勤務する。不定期だが店頭にも立ち、乳製品不使用の「豆乳焦がしキャラメル」など2種を販売する。松本さんは現役時代から甘い物にこだわり、試合の合間には“勝負菓子”としてチョコを口にしていた。ロンドン五輪後は「パフェを食べたい」と発言し、1日4食パフェを食べた日もあった。その時、体重増や体調を崩すことがあり、アスリート目線で「もっと体に良いアイスがあったら、世界中のみんなを笑顔にできる」との考えもあり、今後は商品開発も手がけるという。

銅メダルだった16年リオデジャネイロ五輪後に結婚し、17年6月に第1子となる長女を出産。20年東京五輪を目指して「ママでも金メダル」と宣言し、復帰した。しかし、昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権で1回戦敗退し、東京五輪代表が絶望的となった。「闘争心がなくなり、『勝負師として終わった』と気づいた」。試合直後に会社に引退する意向を報告した。

「野獣を作るのはものすごく力がいる。子育てと野獣の両立は難しかったけど、柔道人生に悔いはない。スッキリしている」。柔道家として最後の会見は、涙なく笑いに包まれた。その表情は晴れやかだった。【峯岸佑樹】

◆松本薫(まつもと・かおり)1987年(昭62)9月11日、石川県金沢市生まれ。5歳で柔道を始める。金沢学院東(現金沢学院)高-帝京大。10、15年世界選手権優勝。12年ロンドン五輪金メダル。銅メダルだった16年リオデジャネイロ五輪後に一般男性と結婚。17年6月に第1子の長女を出産。右組み。得意技は大外刈り、小外刈り。163センチ。