【パリ=吉松忠弘】世界72位の西岡良仁(23=ミキハウス)が惜しくも大魚を逃した。30日の男子シングルス2回戦で、身長差28センチで、同9位のフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)に7-5、4-6、2-6、7-6、2-6のフルセットと健闘したが、自身初の4大大会3回戦進出、トップ10からの勝利とはならなかった。

しかし、170センチとトップ100で最も小柄な西岡の善戦に、デルポトロも脱帽した。

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観客は総立ち。負けたにもかかわらず「ヨッシー」コールが会場中に響き渡った。握手に向かう西岡をデルポトロは日本風のおじぎで迎え、しっかりと抱き締めた。「見た人がすごくおもしろかったとか、エキサイティングしてくれたら、僕がやれることはやったのかなと思う」。

西岡の身長170センチは、シュウォーツマン(アルゼンチン)、ファビアノ(イタリア)と並んで、トップ100で最も低い。抱き締められた西岡の頭は、デルポトロの肩あたり。身長差28センチ。体格差は大きく、体重は、柔道で言えば60キロ級と100キロ超級の対決で「でも、それがテニスのおもしろさ」と、西岡は笑った。

デルポトロのサーブは最速213キロ。17本のエースを奪われた。「いいところに入ったら仕方がない」。フォアの豪打は、ジョコビッチやナダルさえ恐れをなすほどの威力。「走りながら(フォアを)打たれたら取れない。めちゃ怖かった」。

それでも、さまざまな球種と山なりやカウンターのショットを駆使し、前後左右、上下を使う3Dプレーで相手のタイミングを外し、引っかき回した。デルポトロは体勢を崩し、昨年10月に骨折した左ひざを痛めた。最後まで追い込んだ。勝利まであと少しだった。

勝てはしなかった。しかし「自信がすごくついた。さらに1個、大きくなったと思っている。これを継続していったら、どこかしらで勝つチャンスが巡ってくる」。フランスの目が肥えたファンを魅了し、まさに、西岡が小さな巨人になった瞬間だった。