全国高校ラグビー大会は3日、大阪・花園ラグビー場で準々決勝4試合が行われる。関東勢では、流通経大柏が大阪朝鮮高(大阪第2)、2連覇を狙う桐蔭学園(神奈川)が前回大会準優勝の御所実(奈良)と戦う。

ひたむきにプレーする選手の姿を花園で見られることに、ひときわ感慨深そうに見つめるのが日本協会でユース年代の育成に携わる野沢武史さん(41)だ。SNSで高校生らにプレー動画の投稿を呼び掛ける「#ラグビーを止めるな2020」を発案した。各大学やトップリーグのスカウトが、有能な選手を見つける機会につながっただけではない。その取り組みは他のスポーツにも応用され、埋もれた才能を発掘する方法として受け入れられている。

きっかけは、春先の選抜大会が新型コロナの影響で中止になったことだった。「採用がうまくいってないとリクルーターから相談がありました。選手や指導者の中にも実力を発揮する機会がないと言われ、両者をつなぐプロジェクトが必要と考えました」。選手たちにプレー動画を撮ってもらい、スカウトがチェックできるプラットフォームを作ろう-と決めた。

友人に呼び掛けて協力者を募り、昨年4月下旬から動き始めた。十分な資金や時間があれば、ホームページを開設して専用応募フォームを立ち上げるなど手の込んだ仕掛けができた。猶予がない中で浮かんだのが、ツイッターやインスタグラムといったSNSの活用だった。コロナ禍でもラグビーの灯火を消さないためにとの思いを込め、「#ラグビーを止めるな2020」を考えた。

プレー動画と共に選手名や学校、ポジション、身長・体重など明記しての投稿が相次ぎ、投稿数は1000件以上。個人練習を撮影したり、気に入ったプレーを編集してまとめたり。スカウトの目につくように自己PRする動画が多く並び、採用活動の活発化につながった。

年末から始まった全国高校大会でも、投稿した選手が活躍している。初出場の川越東WTB渡辺匠(たくみ)(3年)は、自身のトライ集を動画編集して投稿すると再生数は5万を超える反響を呼んだ。動画を見た大学のスカウトからも声が掛かったといい「みんなに見てもらいたくて動画をあげたけど、予想以上でした」と驚いていた。

発案者の野沢さんは「海外からも投稿があり、改めてSNSの力を感じました」。他のスポーツとも連携しながら、今後も活用策を模索していくと意欲的だ。ベスト8まで決まり佳境を迎える全国高校大会について「最後までなんとか無事に終わってほしい」と心から願っていた。【平山連】