バドミントン男子シングルス世界ランキング1位で、東京五輪での金メダルが期待される桃田賢斗(26=NTT)が、9日までに代表インタビューに応じた。東日本大震災により、当時通っていた福島県富岡高は被災した。あれから10年、桃田は被災地の思いを背負い、日本代表として戦う。

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-優勝した19年全英オープンの決勝は、日本時間3月11日だった。どういう気持ちで試合に臨んだか

桃田 その日だからというわけではないけど、少しでも見てもらえているなら、元気を与えられる試合をしようと思ったことは覚えている。

-優勝という結果が、震災で被害に遭った人たちに力を与えられるという考えも持っていた

桃田 そうですね。正直、現場に行って復興支援を手伝えるわけではないので、お世話になった方々に結果で恩返しするというか。スポーツは見ていると元気や感動を与えられると思うので、そういう面では少しは力になれたのかなと思う。

-震災当日に日本にいたわけではないが、被災者の1人という立場で、今だからこそ伝えたいことは

桃田 本当に先が見えない、本当につらい日々だったと思う。自分はチームメートと会えないだけでつらかった。でもその中でいろんな人が協力して、まだ完全な状況ではないけれど少しずつ復興して。人と人とが協力するエネルギーというのは本当にすごい。だからこそ自分も、結果だったり、スポーツの力でそういう人たちの頑張りを少しでもサポートできたらいいかなと思う。

-震災から10年の節目に東京五輪がある

桃田 10年の節目で、自分の状態がすごくいい時に東京で五輪が開催されるというのは何かの縁があると思う。前回大会では本当にたくさんの方の期待を裏切り、迷惑を掛けてしまった。その気持ちともしっかり向き合い、責任感を持って取り組んでいきたい。元気や感動を与えられるような試合をして、金メダルを取れたらいいなと思う。2倍感動を与えられるように頑張りたい。

-以前にインタビュー記事で、「自分が世界舞台で活躍したら、富岡の中学校や高校の名前が出て、震災の影響を受けた場所だとみんなに知ってもらうことができる」とのコメントがあった。今もその思いは

桃田 自分が活躍することで、出身校がある富岡町や福島県のことが必然的に出ると思う。年月がたつにつれて忘れてしまう人はいると思うけど、絶対に風化させてはいけないこと。みんなが常に考えてサポートし合わないといけない。そういう意味でも自分が活躍することに意味があるのでは。

-この後に控えている全英オープンで国際大会に復帰する。意気込みは

桃田 正直、そんなに自信はない。代表合宿もあまりできていないし、海外の人たちともまだ試合を全然できていないので、不安要素がすごく多い。自信を持って「勝ちます」とは言い切れないけど、東京五輪に向けた本当に大事な一戦になってくると思うので、強い気持ちだけは持ってしっかりと戦いたい。常に自分が主導権を握れるような試合展開をできれば。

 

◆桃田の10年

11年3月11日 福島県富岡高1年時、インドネシア合宿中に東日本大震災発生。

12年11月 世界ジュニア選手権で日本人初優勝。

13年4月 高校を卒業し、NTT東日本に入社。

15年4月 シンガポール・オープンで日本男子初のスーパーシリーズ制覇。

同年12月 全日本総合選手権初優勝。

16年4月 違法賭博問題が発覚し、無期限出場停止処分を受ける。

17年5月 復帰戦となった日本ランキングサーキット大会優勝。

18年8月 世界選手権(中国・南京)男子シングルスで日本男子初の優勝。

同年9月 世界ランキングで日本勢初の男子シングルス1位になる。

19年3月 全英オープンで日本男子初の優勝。

同年8月 世界選手権(スイス・バーゼル)で日本男子初の連覇。

同年12月 全日本総合選手権2連覇。ワールドツアーファイナルで2度目の優勝。主要国際大会11勝目となり、のちにギネス認定。東京五輪代表も確実とする。

20年1月 遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれる。

同年2月 日本代表強化合宿に参加。練習で「シャトルが二重に見える」と訴え、病院で検査を受け、眼窩(がんか)底骨折と診断される。手術を受け、そのまま入院。

同年12月 復帰戦の全日本総合選手権で3連覇。

21年1月 タイ遠征出発直前、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応。

 

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