日本フェンシング協会は19日、都内で理事会と総会を開き、太田雄貴会長(35)の退任とタレント武井壮(48)が新会長に就く新体制を承認した。

男子フルーレの元日本代表で日本最高のオリンピック(五輪)銀メダル2個を持つ太田会長が会見し、再任7人と新任13人の理事20人を発表。この競技の象徴だった太田会長が4年間の任期を終え、新たにトップとなる「百獣の王を目指す男」が呼び込まれる形で登壇した。

武井新会長は「すごく重みを感じています。これまでのフェンシング界にご尽力いただいた全ての皆さまに感謝し、太田会長から、私の発信力、スポーツをよりメジャーにしていくというビジョンを共有させていただいた。会長という肩書をいただきましたが、1人のアイデアマンとして、自分自身もフェンシングを愛して楽しむ1人として、国民の誰もがフェンシングを知る日本にしていきたい」と所信表明した。

太田会長は「自分は4年間の人を終えて卒業し、今後の協会には『太田だからできた』といったような、属人的な運営体制からの脱却を図り、新たな組織体制を構築する必要がありました。武井さんはもともと陸上の選手(十種競技の元日本王者)でフェンシング経験はないのですが、会長に必要な能力はヴィジョンを掲げられること、大きな発信力があることで、この半年、1年と後任を探しているうちに、ようやく『この人だ』という人を見つけることができました。それが武井さん。なかなか首を縦に振っていただけず、最後は半ば折れるような形だったんですが、本日、晴れて新会長および新体制の発表という運びになりました」と説明した。

18年4月25日に放送された、武井新会長が司会を務める毎日放送「スポーツ内閣」で共演したことをきっかけに2人は親交を深めてきたという。武井氏は「何度も自宅にお越しになって熱意を伝えられました。今はまだ、街を歩いている人に聞いてもフェンシングの日本王者を分かる人は多くないと思いますが、プロ野球選手やゴルフの松山英樹選手、ボクシングの井上尚弥選手のように、誰もが知るフェンサーを育てていきたい」と熱く語った。

太田氏は何らかの役職で武井新会長を支えていく。一方、国際フェンシング連盟の副会長は任期満了まで全うし、立候補している国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員会メンバー入りを目指す活動は続ける。数々の改革を成功させてきたが「会長としては昨年の全日本選手権が最後と決めていました。東京五輪の直前ですが、延期をへて、もう今から大きく変えることはないので、もともと予定していた21年の6月を持って理事の改選を行いました。今後はビジネスも突き詰めていきたい」と説明した。【木下淳】

◆武井壮(たけい・そう)1973年(昭48)5月6日、東京都生まれ。神戸学院大で陸上を始める。10種競技を志してから、わずか2年半で97年の日本選手権優勝。スポーツトレーナーの傍ら芸能活動を始め、12年に中居正広が司会のフジテレビ系「うもれびと」に出演し「百獣の王を目指す男」としてブレーク。ダンサーやライター、司会業など多彩な才能を発揮。175センチ、69キロ。血液型A。