阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。

第6回はスポーツクライミング女子のホープ、伊藤ふたば(20=TEAM au)の今に迫った。東京五輪は代表選考基準を巡る裁判の末、不運な形で出場チャンスを逃した(※1)。2年後のパリに向けた本音を聞いた。【取材・構成=佐井陽介、松本航】

    ◇    ◇    ◇

鳥谷 普段はウエートトレもされるのですか?

伊藤 私はやります。週2回程度は入れています。

鳥谷 クライミングならではの練習もありますか?

伊藤 自分の弱みとか、登り方の特徴にもよるけど、基本的に懸垂をやる人が多いですね。あと、私は海外に行けば身長が小さい方で、ボルダリングでも飛んで距離を出さないといけないので、ジャンプ力を鍛えたりスクワットをやったり…。体幹もかなり重要でトレーニングします。

鳥谷 体験したから分かりますけど、ホールドをつかむ指も大変ですね。

伊藤 指はフィンガーボードにぶら下がって鍛えたりします。でも、ずっとクライミングを続けていれば鍛えられていきますよ。

鳥谷 では指のケアは一体どうすれば…(笑い)

伊藤 指の奥から1関節ずつ伸ばしたり、手のひらもしっかりほぐしたり、手の裏も1本1本の骨の間をほぐすと良いと思います。

鳥谷 帰りの電車でずっとほぐします。少しかじっただけでも指がすごいことになっているので(笑い)

伊藤 (爆笑)

鳥谷 ところで食事制限などはどうですか?

伊藤 私は結構気を使っています。自分の体を自分で支えなきゃいけないので、あまり重すぎると指とかに負担がかかってしまう。ある程度は軽い方がいいので、ベスト体重を維持できるように管理しています。バランス良く食べて、カロリーも結構気にします。

鳥谷 ちなみに1週間の流れはどんな感じですか?

伊藤 週4日か5日は登って、残り2日のうち1日は筋トレだけ。1日は完全オフにしています。結構疲れちゃっているので、休日はゆったりしています(笑い)。おうちにずっといたり、カフェに行ったり…。

鳥谷 高校卒業後から東京に拠点を移されたそうですね。

伊藤 結構慣れてきました。岩手の田舎にいたので最初は電車とか人混みに戸惑いましたけど、最近は大丈夫です(笑い)

鳥谷 それは良かった(笑い)。東京五輪では野中選手が銀メダル、野口選手が銅メダルを獲得されました。最後にパリ五輪への思いを聞かせてください。

伊藤 東京五輪は裁判の結果で出場できなくなってしまって、すごく悔しい思いをしました。その時はかなり沈んでしまったのですが、実際に東京五輪に出られた人たちを見て、パリ五輪に出たいという気持ちがすごく強くなりました。東京は野口さんが最後の試合だったりもして、本当に頑張ってほしい気持ちがありました。一方で、メダルをかけられる姿を見て、やっぱり自分が出たかったとすごく感じました。次は自分自身がその舞台に立ちたいと思っています。

(この項終わり)

 

【鳥谷敬×伊藤ふたば<記者メモ>クライミングシューズ、実は…】はこちら>>

 

※1…伊藤は19年の東京五輪予選を制して日本代表残り1枠を争っていたが、国際連盟は五輪出場基準の解釈を変更し、19年世界選手権日本勢男女上位2人で確定とした。日本山岳・スポーツクライミング協会はスポーツ仲裁裁判所へ提訴も棄却。

 

◆伊藤(いとう)ふたば 2002年(平14)4月25日、岩手・盛岡市生まれ。小3から父の影響で競技を始める。パナソニックCMで女優の綾瀬はるかと共演も。17年ボルダリング・ジャパンカップに史上最年少14歳9カ月で優勝。岩手・盛岡中央高を経て21年からプロ。好物はガトーショコラ。161センチ。

 

◆伊藤の今季 国内のパリ五輪強化選手トップのSランク(2人)に位置。ボルダリングW杯6戦、リードW杯6戦に出場し、最高はボルダリングが4位、リードが14位。10月20~22日には地元の盛岡市でパリ五輪と同じ方式となる複合W杯が行われる。五輪代表選考は23年から本格化する。

 

◆スポーツクライミング 2人で高さ15メートルの壁を登る速さを競う「スピード」、高さ4~5メートルの壁に作られた複数の課題(コース)で制限時間内の完登数を争う「ボルダリング」、高さ12メートル以上の壁で登った高さを競う「リード」の3種目で構成。東京五輪は3種目の複合を実施。パリ五輪は「スピード」の単種目と「ボルダリング」「リード」の複合が行われる。