【トリノ(イタリア)=松本航】日本初の表彰台独占へ、男子が好発進した。

世界王者の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)がSP今季世界最高の99・99点で首位に立った。10日のフリーでは高橋大輔、羽生結弦に続く、日本男子3人目の優勝が懸かる。94・86点の山本草太(中京大)が2位、87・07点の三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)が3位で続き、佐藤駿(明大)は76・62点で6位。06年トリノ五輪の会場からハイレベルな競演を届ける。

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上位3人の記者会見は午後10時に差し掛かっていた。最後に姿を見せた宇野が中央に座ると、両隣に年下の山本と三浦がいた。「誰がトップに来るか分からないレベルで練習をしている。『日本はレベルが高いな』と思います」。疲れの出る時間帯に、日本男子最年長の男は冷静に分析した。

すがすがしい表情だった。昨季は出場権を得ながらもコロナ禍で大会が中止となり、4年ぶりの大舞台。4回転2本、トリプルアクセル(3回転半)を降り、演技構成点は2位に5・38点差と総合力の高さを示した。16年前、この場所で五輪銀メダルをつかんだランビエル・コーチとほほ笑み「2人で心地よい大会にできたら」と理想を描いた。

「練習してきた成果がしっかり出るSPだったと思います。ジャンプ以外は本当に練習してこなかった成果が出ていたと思います」

それは充実を意味した。スピン1つとステップはレベル3。最高の4に届かなかった。取りこぼしとも捉えられるが「心残りがありながら(演技最初の)ポーズをとった」と笑った。当初は昨季で履き終える予定だった靴を、シーズン本格化を前に再使用。GP2連勝を飾った3週前のNHK杯後も、しっくりとこなかった。ブレード(靴の刃)の位置など細かく気にしていたが「慣れるしかない」と割り切った。「その日から練習が前向きになった」。大会直前はランビエル・コーチの拠点スイスで調整。ジャンプが仕上がった。

今も昔も、大会では常に練習の成果の発揮にこだわってきた。スピン、ステップの質向上は伸びしろだ。

「フリーはいい演技か、悪い演技か分からないけれど、しっかりと後悔のない練習を積み重ねてこられた。何とかなると思います」

宇野は宇野らしく、フリーの大トリを務めあげる。