日本の絶対エースが、自分史上最高の年を更新する。バレーボール男子のイタリアリーグ・セリエAで活躍する石川祐希(28=ミラノ)が、今年のパリ五輪で1972年ミュンヘン大会以来のメダル獲得に向け、自信をたぎらせた。昨年は、ミラノ初のリーグ4強入りに貢献。そして日本代表では、46年ぶりの国際大会メダル獲得や五輪切符獲得に導いた。“勝利請負人”が、五輪イヤーの2024年、バレー界の歴史に新たな1ページを刻む。【取材、構成=勝部晃多】

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石川が、大きくうなずいて断言した。「一番良い結果が出て、一番印象に残るシーズンでした」。競技人生19年間の中でも最も充実した1年だったという23年。セリエAでの自己最高位の4強進出に始まり、日本代表主将として出場したネーションズリーグ(VNL)で国際大会46年ぶりのメダルとなる銅メダル獲得。アジア選手権では3大会ぶりに頂点を奪還、そしてW杯バレーでパリ五輪切符獲得にけん引した。

全身に残る、あの“感覚”が、歴史的飛躍への動線になった。4月10日のセリエA・プレーオフ準々決勝第5戦。2勝2敗で迎えたペルージャとの最終戦で、マッチポイントから鋭いバックアタックを突き刺した。「あの感覚は、なかなか味わえるものではない」と振り返る鮮烈な感触。「1点が決まってあれだけ喜んだことって、ここ数年なかった」。レギュラーシーズン22戦無敗だった強敵を退けた一撃を、爆発した感情とともに、その後の代表活動につなげていった。

しかし、そんな輝かしい功績の数々も、「割と昔というか、結構過ぎたことだと思っています」。普段から過去を顧みることは少ないという男の目は既に、これからにフォーカスしている。その中で「やっぱり特別」と位置付けるのが、パリ五輪。「バレーボール選手にとっては、この舞台が一番大きな大会。やっぱりそこで結果を出したい思いは強いし、他の国の選手もそうだと思う。とても価値がある」と、シンプルな言葉に真夏の祭典への強い気持ちを込める。

「もっと良い色がある」。VNLで銅メダルを獲得した直後、そう言った。見据えるのは72年ミュンヘン大会以来となる金メダル。その大目標に達するにはVNL覇者ポーランドや、世界ランキング2位の米国を上回らなければならない。昨年相対した際には「やっぱり僕たちの方が精度が低い」と痛感。「全員嫌なサーブを打ってくるし、ブロックディフェンスも精度が高い。スパイクだけじゃなく、いろんな1点の取り方をしてくる」とトップに立つ理由を肌で感じ取った。

それでも、金獲得を夢物語だとは思わない。「自分たちの力をコントロールできるチームじゃなければ上にはいけない。そういう意味では、W杯を勝ち切れたっていうことは大きな自信になった」。粘り強い守備と、強固なチームワークは世界でもトップクラス。一番高い場所との差は「もちろん」縮まっていると、自信をにじませた。

今季のミラノは、ここまで12試合を終え7勝5敗の5位。自身はW杯バレーから悩まされている腰痛の影響もあり、コンディションを上げていく段階だが「結果を残せる準備をしている」と焦りはない。「しっかりと目標を達成する」。日の丸の絶対エースは、自分史上最高の1年を、塗り替え続けていく。

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)1995年(平7)12月11日、愛知県岡崎市生まれ。小4で競技を始め、愛知・星城高では2年連続3冠(インターハイ&国体&全日本高校選手権=春高)達成。14年に中大に進学し、在学中からイタリアでプレー。同年に初めて代表入りし、21年から主将を務める。現在はセリエAミラノ所属。ポジションはアウトサイドヒッター。192センチ、84キロ。

◆パリ五輪のバレーボール 女子は開会式翌日の7月27日、男子は28日にスタートし、男子決勝が行われる8月11日までの16日間実施。最初の9日間が予選ラウンドで、12チームが3組に分かれて総当たりで対戦。各組上位2チームと、3位チームのうち上位2チームが決勝トーナメントに進出する。全試合パリ15区に位置するパリ南アリーナ1で行われる。