「竹田家3代の夢」を背負う男が“阪奈決戦”で暴れ回る。全国高校ラグビー大会は7日、御所工・御所実(奈良)-常翔啓光学園(大阪第1)のAシード同士で決勝が行われる。初優勝を狙う御所工・御所実は6日、御所市内の同校グラウンドで最終調整。竹田寛行監督(48)の三男でFB宜純(2年)は、66年前の24回大会に出場した祖父喜行さん(83)も見守る前で「啓光に勝ちたい」と宣言。祖父の応援と父の指揮の下、頂点を狙う。

 最後のゲキに、しっかりと耳を傾けた。「この1年やってきたことは、啓光にリベンジするため。忘れるなよ。最高のパフォーマンスをしようや」。御所工・御所実の竹田監督の熱い言葉に、息子のFB宜純(よしずみ)がうなずく。「啓光に勝ちたい」。短い言葉に力を込めた。

 竹田家3代の夢をかなえるときが来た。祖父喜行さんは、戦時中の1942年(昭17)1月に南甲子園運動場で開催された24回大会に、徳島・脇町中のフッカーとして出場したが2回戦敗退。竹田監督も脇町OBだが、花園には行けなかった。徳島から応援に来ている喜行さんは、この日の練習を腰をかがめながら見守り「ここまで来たら必ず優勝してほしい」と願った。日本一の夢を託された孫は「ここまで来たら優勝したい」と答えた。

 平均身長170・7センチのチームの中で、最長身181センチは貴重な存在だ。家でも、学校でも怒られるという父からも「突破力はかなりのもの。守備もしっかりしてる」と信頼を得ている。

 常翔啓光には昨春の全国選抜決勝で21-36と敗れるなど、この1年は1勝2敗だ。すべての試合に先発出場した宜純は「あっという間にトライを取られる。スピードがある」。だが、やられた分、気をつけるポイントも把握している。「キック処理をちゃんとして、できれば突破もしてトライにつなげたい」と言う。

 父は監督就任20年目の節目の年。さらに、今春から御所実に校名変更されるため、御所工の名が残るのも今大会が最後。一家の夢だけでなく、多くの関係者の期待も背負って、決戦の舞台に立つ。【木村有三】