<高校ラグビー:関西学院5-0国学院久我山>◇準々決勝◇3日◇花園

 関西学院(兵庫)が国学院久我山(東京第2)を完封で破り、初のベスト4進出を決めた。優勝5回を誇る名門に、15人がこん身のタックルを連発。前半5分のSH徳田健太(2年)のトライを守り抜いた。明日5日の準決勝は東福岡(福岡第1)と対戦する。

 応援席前に「アタックル!!」の横断幕が揺れる。高校日本代表候補フッカーの浅井が国学院久我山のジャージーにしがみついた。こぼれたボールに1年生SO岡本が絡み、反則を誘った。タッチを切って、ノーサイドだ。名門を完封して初の4強。雄たけびを上げる関西学院フィフティーンに、安藤監督が感極まった。

 「生徒が笑顔で戻ってくるのに『泣いたらあかん』と必死でした。ようディフェンスにいった。最高。すばらしい。100点満点以上です」。

 上ずる声で、思いつく限りの賛辞を並べた。

 タックルから生まれたチームだ。一昨年11月23日、兵庫大会決勝で報徳学園に14-19と敗れた。新チーム始動時、安藤監督は課題を与えた。「タックル1000本」。ダミー人形に、約50キロのサンドバッグに、生身の仲間に当たった。腰から下に入る。つかんだパックは引きつけて、絶対離さない。FW、BK関係なく1日約30本。1カ月を過ぎて、部室のホワイトボードに書き連ねた1人あたりの本数は「1029本」になった。

 「僕も脳振とう起こしたり…。でも、あれをやったから、今はみんな、恐怖感なくいけると思う」とフランカー鈴木主将。変化はあった。アタックの強さで高校日本代表候補になったロック徳永も、腰高だったタックルが相手の下半身にしかいかなくなったという。

 この日は集大成だった。深いラインを敷き、前方のスペースで加速を狙う国学院久我山を、待たず、前に出て、止めた。前半5分、WTB前川のスピード、徳永、笹井の両ロックの突進など15人がひとつになって決めた1トライを、15人のタックルで守り切った。

 準決勝の相手は、抽選で東福岡に決まった。高校ラグビー史上初の選抜&花園のダブル連覇を狙う、問答無用のV候補筆頭だ。

 「個々の動きが自由で、ラグビーを楽しんでやっている感じ。でも、やることは変わらないです」と鈴木主将が苦笑いする。

 「『どんだけタックル、いくねん』と思うような試合をしてほしいですね」と安藤監督も苦笑いする。

 前に出る。当たる。しがみつく。関西学院のラグビーは、それだけだ。【加藤裕一】