<水泳世界選手権:競泳>◇29日◇上海

 すべてこのレースのためにやってきたが、ライバルは強かった。男子200メートル背泳ぎで入江は2大会連続の銀メダル。先行型のロクテに食らい付いたが、後半置き去りにされた。「今回も悔しい銀に変わりはない」と、うっすら浮かんだ涙をぬぐった。

 腕のかきやキックの回数を数えない感覚的な選手が、打倒ロクテを掲げて映像分析やラップタイムの比較で宿敵を分析してきた。だが得意の終盤に逆転するシナリオは崩れ「ロクテが一枚上手だった」と認めざるを得なかった。

 2年前は当時の世界記録を上回るタイムを出しながら水着が認可されず非公認となる騒動に巻き込まれた。「水泳が楽しくなかった。頑張りが評価されなかった」。昨年は選手生命を左右しかねない右足首のけがにも見舞われた。

 それでも道浦コーチが「軽い貧血になるくらい頑張り抜く」というほど自ら追い込む男は屈しなかった。「言って解決するものじゃない」と愚痴はこぼさず、右足首の負傷も家族は報道で初めて知ったという。忍耐強く、丁寧に積み重ねた努力だったが、頂点は遠かった。