打倒・フェルプス-。男子バタフライの松田丈志(27=コスモス薬品)が、ぜい肉をそぎ落とし、「水の怪物」に挑戦状をたたきつけた。北京五輪の200メートル決勝で屈した怪物との再戦が、目前に迫る。世界選手権を自ら来年ロンドン五輪の前哨戦と位置付け、「そこに集中していく。前半同じくらいでいければ、後半は自信がある」。トビウオジャパン(競泳日本代表)の主将は、真っ向勝負を見据えた。

 上海入り目前の北海道合宿で、松田が引き締まった肉体を披露した。身長184センチで通常85~86キロの体重を、81~82キロまで落とした。「周囲から助言されたこともあり、今まで重すぎたのではないかと思って」と理由を明かす。国立スポーツ科学センター(JISS)の栄養士に相談し、取り組んだのが「食べる順番ダイエット」だった。

 これは食べる量を抑えるのではなく、決められた順番に食べることに重きを置く。最初に必ず野菜を摂取し、最後は炭水化物で締めるというもの。そうすることで血糖値やインスリン分泌の上昇が緩やかになる。同時に糖分の高いオレンジジュースは1日1杯、カロリーの高い牛乳は1食1杯に制限。6月の欧州遠征から取り組み、北京五輪で銅メダルを取った時の83~84キロよりも軽くなった。松田は「すごく納得した形で、ストレスなく無駄な部分を落とせた。今は泳ぎが軽く感じる」と言うほどだ。

 少年時代から二人三脚で歩む久世コーチのもと、呼吸時の頭の位置、目線にまで細心の注意を払い、最終調整を進める。200メートルは1分54秒12で今季世界ランク1位。フェルプスが1分54秒33の5位といまひとつ調子が出ない中、手応えは高まるばかりだ。「フェルプスも最後には仕上げてくると思う。ロンドンの前哨戦。来年のモチベーション、目標に関わってくるので大事にしたい」。身も心も軽やかに、松田が大きな山に挑む。【佐藤隆志】

 ◆松田丈志(まつだ・たけし)1984年(昭59)6月23日、宮崎県延岡市出身。延岡学園高-中京大-中京大大学院を経て、現在はコスモス薬品に所属。五輪は04年アテネ、08年北京に出場し、北京の200メートルバタフライは1分52秒97(日本記録)で銅メダル。400メートル自由形も3分44秒99の日本記録を持つ。184センチ、81キロ。血液型B。