<水泳世界選手権:競泳>◇24日◇上海

 北島は得意のはずのスタートで出遅れた。普段なら浮き上がりで頭ひとつリードしているのに、珍しくリードを許した。泳ぎそのものも、こぢんまりとまとまってしまった感じ。力はついて動きのスピードもあったが、独特の柔らかさは足りなかった。力強さは感じたけれど、泳ぎの伸び伸び感がないように見えた。

 一方のダーレオーエンは調子が良さそうだ。予選も準決勝もラスト10メートルでグーンと出てきている。前半50メートルは27秒92で北島より0・35秒速かったし、後半の強さも相変わらず。決勝は58秒台後半で泳ぐ可能性もある。北島は合わなかったタッチを修正しても、前半は28秒前後か。後半31秒で泳いでも、59秒台前半がやっとだろう。そうなると、金メダルは難しくなる。

 ただ、北島には経験がある。北京五輪の時も決勝レースで逆転したように、レース展開をコントロールする能力がある。前半から飛ばすのか、後半に力を温存するのか。決勝までに勝つためのレース展開を考え、それを実行するはずだ。2強の争いはロンドン五輪の前哨戦としても興味深い。(日刊スポーツ評論家、テレビ朝日解説者)