<世界バレー2010女子:日本3-2米国>◇3位決定戦◇14日◇代々木第1体育館

 「東洋の魔女」の復活だ!

 世界ランク5位の日本が、3位決定戦で同2位の米国を3-2で破り、銅メダルを獲得した。7連敗中だった相手に第1、3セットを落としたが、エースの木村沙織(24=東レ)のチーム最多28得点の活躍で、フルセットの末に逆転勝ち。1978年の銀メダル以来32年ぶりのメダルを手にし、12年ロンドン五輪でのメダル獲得へ、大きな1歩を踏み出した。決勝はロシアがフルセットの末にブラジルを下し、2大会連続7度目の優勝を果たした。

 木村のスパイクが、相手ブロックをはじいてコート外に転がった。この瞬間、日本の32年ぶりのメダル獲得が決まった。1万2000人の大歓声に会場が揺れる。木村は涙を流しながら、仲間と抱き合った。「(最後は)仲間のつないでくれたボールだから、思いを込めて打ちました。高さのある相手なので、強打せずにブロックアウトを狙いました」。最後まで熱く、そして冷静だった。

 世界2位に第1セットを奪われた。しかし、「チーム全員が絶対に取り返すつもりでいた」(木村)。第2セット途中から投入された石田瑞穂(22=久光製薬)の活躍などで、25-23で取り返した。第3セットを失い、窮地に立たされた。それでも負けなかった。第4セットに再び追いつくと、最終セットは10-8から木村のスパイク、ブロックなどで5連続得点して逆転勝利をつかんだ。

 準々決勝で敗退した北京五輪後に就任した真鍋政義監督(47)は、木村を主軸に据えたチームづくりを進めてきた。昨年から主要国際大会で全セット出場。実戦の中でレフトから右へ、角度のないクロススパイクを打てるようになった。これを「体がネットと正対した状態でできる」と川北元コーチ。相手ブロックも予測できない武器を軸に、7月のトリノ国際でMVP、8月のワールドGPでは得点王に輝いた。そして今大会は2位の計240得点をたたき出した。

 サーブレシーブの中心も担った。真鍋監督が言う。「前はサーブレシーブが全くだめだったが、音を上げずに頑張った。今は攻撃だけでなくリベロの佐野と2人でサーブレシーブの中心選手をやっている」。主将の荒木も「(木村は)進化しまくっている。声を張り上げてみんなに檄(げき)を飛ばして、その上でスーパープレーを見せるんだからすごい」。

 日本は64年東京五輪の金メダルで「東洋の魔女」と呼ばれ、70年代に旧ソ連と金メダルを争った。その後、84年ロサンゼルス五輪の3位を最後に世界大会でのメダルから遠ざかっていたが、絶対的なエースに成長した木村が長い低迷期に終止符を打った。試合後は「メダル取れてよかったなという気持ち。ホッとしました」と本音をもらした。

 木村にけん引されて、4月から招集された江畑幸子(21=日立)や迫田さおり(22=東レ)らも急成長した。米国戦で途中出場した石田もチーム2位の11得点を挙げた。チーム全体が上げ潮に乗った。「ロンドン五輪へつながる」と木村。今度は28年ぶりの五輪メダルへ、新時代のエースが引っ張っていく。【小谷野俊哉】