つらい経験を、次にどう生かすか。野球選手にとっても、それは大事なことだと思う。

 ドラフト5位ルーキーの有吉優樹投手(26)は、5月24日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で手痛い1発を浴びた。同点の7回1死、内川に投じた初球のチェンジアップが真ん中に入った。左中間席へ飛び込む決勝の満塁本塁打となってしまった。

 3日後。「もう気持ちの整理は出来ました」と言って、振り返った。

 有吉 同じことを繰り返さないことが大事。(本塁打の)あの場面よりも、その前に四球を出した。確かに強打者が続きましたけど、(前打者の)柳田さんにストライクゾーンで勝負出来なかった。そのことを反省して、1つ成長する糧にしないといけない。

 さらに、こう付け足した。「頭では、いくらでも反省できるんですよね。次、結果で示さないと」。

 本塁打直後に、降板を命じられた。投手コーチがマウンドに来るわずかな時間を縫って、ある先輩から声をかけられた。一塁を守っていた根元だ。

 「これからだぞ」

 有吉は、とっさに「試合は、まだこれからだ」と受け止めたという。そういう意味もあったかも知れないが、根元の真意は、もっと大きなところにあった。

 根元 これからの野球人生は長いんだから、また頑張れよ、と。僕には、ホームランを打たれた時の投手の気持ちは分かりません。ただ、満塁弾。投手としては最悪なわけで。でも、あいつはここまで抑えてきたし、ルーキーだし、シーズンも、あいつの野球人生もまだまだ続く。直後で耳に入るか分からなかったけど、チームのためにも頑張ってもらわないといけないですからね。

 有吉は「声をかけてもらったから楽になった、は違うと思います。打たれた事実は変わりませんから。もっと頑張らないといけないと思いました。声をかけてもらえるうちが花。その間に、しっかりしないと。何も言われなくなったら、おしまいです」と言った。

 失敗を通してチームメートとの関係も深まった。そのことが、また成長の糧となるはずだ。【ロッテ担当=古川真弥】