オリックス金子千尋投手(32)が20日のロッテ戦で史上133人目の通算100勝を達成した。56敗での100勝は、48年森弘太郎と並び球団史上最少黒星の到達となった。2013年にオリックスで投手コーチを務め金子を指導した野球評論家の西本聖氏に話を聞いた。

 -金子が100勝を達成。どんな選手?

 西本氏 安定しているし、自分の考えをしっかりと持っている選手。勉強家で、どんなことにも理由を持って取り組んでいる。勝っている投手というのは皆そうですけどね。それともの静かなタイプ。「オレがオレが」という選手ではない。

 -西本さんが指導した2013年シーズンはすでにエースだった

 西本氏 こちらからの注文はほとんどなかった。誰もがエースとして認めていた。一番感心したのは「話を聞く子」だったということ。素直で聞く耳を持っている。これは選手として成長するポイントだと思う。

 -アドバイスしたことは?

 西本氏 故障を防ぐためにアドバイスしたことがある。「ノースローで投げたことはあるか」と。登板の間、中5日とか中6日の期間に1度もブルペンに入らないで調整する方法がある。私が中日時代に20勝したシーズンにやってみた調整法で、一切ブルペンには入らずキャッチボールだけ。キャッチボールで感覚をつかむという方法で、疲労を軽減するメリットがあった。金子は勝っている投手だから強制はしなかったけど、シーズン途中からノースロー調整を取り入れたんじゃないかな。あの年(13年)は15勝。結果が出て良かった。

 -叱ったり、怒ったことは

 西本氏 シーズン前に本人と話をして「エースだからみんなの前で厳しい言い方をすることがあるかもしれない」と断りを入れた。でも、ほとんど言うことはなかった(笑い)。

 -100勝56敗。負けが少ないのはなぜ?

 西本氏 ゲームの流れをしっかり読めるから。勝負どころが分かっているし精神的な強さもある。それからバッターを見て投げる投球術を持っている。1球1球、打者の反応を見ながら投げている。これは教えられるものではない。とにかく研究熱心。

 -もう1度、金子を指導するとしたら

 西本氏 プレート(投手板)の使い方かな。金子は右投手では珍しく一塁側を踏んで投げる。右投手は三塁側、左投手は一塁側を踏むのが一般的。なぜかというと右投手が三塁側を踏んで投げれば右打者の外角低めにより角度のあるボールが投げられる。困ったらアウトローが投手の基本だから。金子が一塁側を踏むのはそれなりの理由があると思う。三塁側を踏むと外角を狙ったボールがシュート回転して真ん中に入ってしまうのが嫌なのかもしれない。勝てる投手にあえていろんなことをさせる必要はないけど、三塁側を踏んで投げる金子を見てみたい。もしかすると、もっと凄いピッチャーになるかもしれない。