阪神ケビン・メンチ外野手(31)が事実上の「戦力外」となった。再昇格からわずか4日目の18日に早くも2軍に降格。ヤクルト戦に2試合出場したが、6打数無安打と打撃の状態は上向かず、決断を下された。球団は新外国人獲得の準備を進めているが、真弓明信監督(55)は「今いるメンバーで何とかしないといけない」と外国人に頼らず、若手育成に力を注ぐことを改めて明言した。借金5と低迷する中であえて厳しい道を選択し、19日からの交流戦に挑む。

 福岡行きの飛行機に、メンチの姿はなかった。15日のヤクルト戦(神宮)で1軍に再合流し、わずか3日間でダメを出された。この日登録を抹消され、傷心の帰阪。メジャー通算89発の実績もむなしく、鳴尾浜での2軍生活に逆戻りすることになった。真弓監督は「今の状態で置いていても、もっと悪くなる感じがする。1本出れば、乗っていけると思ったが、出なかったからね。早い方がいいと思って、落とした。打ち出したら、また上げる可能性はあるよ」と理由を説明した。

 指揮官はファームで再調整という表現を使ったが、事実上の「戦力外」と言っていい。前回の2軍降格は過労によるものだったが、今回は打撃不振が原因。2軍戦で2戦連続アーチを放ち、復調を期待していたが、いざ1軍に上げると何も変わっていなかった。ヤクルト戦に2試合出場したが、6打数無安打。課題の速球に対応できない、おなじみの光景にファンの罵声(ばせい)を浴びた。チームの首脳は「(2軍行きは)調整なんてものじゃない。打てないんだから」と厳しい言葉を吐いた。審判の判定に不満を爆発させるなど精神的にも不安定だった。わずか3日間の1軍滞在で再び2軍に落ちるのは、助っ人選手としては異例中の異例だ。とうとう戦力として見なされなくなった。

 メンチを象徴に、打線の状態はどん底だ。5月の13試合で1得点以下は9試合。状況打開に球団では、新外国人獲得の準備を進めている。しかし真弓監督の姿勢にブレはなかった。「この時期に日本に来て、(慣れるまで)何試合も我慢しろ、と言われてもなあ。今いるメンバーで何とかしないと。簡単な道に行くよりもね」。これまで通り、新戦力の加入に否定的。就任時に指針表明した若手の育成に、より力を注ぐ決意を明かした。この日の指名練習でも鳥谷、藤本、大和らを次々と熱血指導。指名打者制もある交流戦で桜井や林ら大砲候補を積極的に起用し、レベルアップさせる考えだ。

 借金5とチーム状態は良くない。さらに交流戦初戦は苦手のソフトバンク杉内が相手。それでも真弓監督はきっぱり言った。「打線がこんな状態だから、逆に開き直ってやれる。いい投手に当たった方がいいと思う」。それは選手起用も同じだ。助っ人という選択肢を消し、開き直っていく。指揮官はあえて厳しい道を選んだ。

 [2009年5月19日11時18分

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