<楽天8-3ソフトバンク>◇26日◇Kスタ宮城

 みんな泣けた。ソフトバンクがシーズン終盤の大逆転で、7年ぶりにパ・リーグを制した。優勝マジック1として臨んだ今季最終戦となった144試合目。ナイターでの楽天戦(Kスタ宮城)の試合中、西武が日本ハムにサヨナラ負けし、リーグ制覇が決まった。就任2年目の秋山幸二監督(48)はベンチでガッツポーズ。主将の小久保裕紀内野手(38)は守備につきながら号泣した。05年にソフトバンクとなってからは初。南海、ダイエー時代を含めると通算14度目の栄冠となった。

 感激は力強い握りコブシとなった。歓喜の瞬間は3回の攻撃中だった。秋山監督がガッツポーズだ。2死一、三塁、西武の敗戦が伝えられた。普段は感情を表に出さないが、この日だけは違った。選手、コーチ、スタッフらと柔らかい笑みで握手を交わした。現役時代に10度リーグ優勝を経験。監督としては就任2年目で初制覇。選手時代とは違う、充実感がある。こみあげるものがあった。現役引退時しか涙しなかったが、潤んでいた。

 本当は勝って宙に舞いたかった。楽天に完敗したが、144試合目で頂点にたどりついた。胴上げでは軽やかに6度、舞った。体重は開幕時より3キロほど減り、球宴時にズボンも1サイズ小さくしている。「本当に長かった。疲れました。144試合目で優勝が決まり、気持ちに宙に舞った。1試合も気を抜くことなく、勝ちにこだわってやってきた。最後まであきらめずに。次は日本一を目指してやっていきたい」と、喜びを表現した。

 耐えに耐え、最後に西武をまくった。8月まで124試合で先発投手を3回以内で交代させたのは11試合だけ。「経験は来年以降も生きる」。小椋や山田ら経験の少ない投手陣を育てる長期的な視点があった。8月の6連敗で首位陥落。9月も4連敗スタートで西武に首位を奪われた。歯を食いしばって耐えた分、苦しかった。昨年は初めて胃にポリープができたが、今年はさらに苦労の連続だった。

 7月にストレスからヘルペスが出た。「眠れないんだよ。起きているのか、寝ているのか。何回も起きるんだよ」とこぼしたのは、8月半ば。不眠症に悩まされた。目や体全体の疲労感が抜けなかった昨年の反省を生かし、ビタミン剤を欠かさなかった。万全を配したが、それでも、食欲は落ちた。遠征先で焼き肉店に入り、1人前すら食べられないこともあった。

 9月の勝負期。采配は一変。投手交代は早めに動き、主将小久保にも送りバントさせた。18日からの西武3連戦ではマウンドに初めて出向き馬原にゲキも飛ばした。突き動かしたのは信念だった。15日に2軍降格を命じた明石に、思いの丈を伝えた。明石はその前日にタイムリー失策を犯していた。「この世界、ああやっておけば良かったとか、こうやっておけば良かったとか後悔を残してはいけないんだ。後悔しないようにやるしかないんだ」。

 采配も後悔しないため、優勝のチャンスと見るや、チームを動かし続けた。信念は誰も揺さぶることはできない。夏場、球団フロントが、あるデータを手に監督室に来た。犠打を勧める資料だった。だが、采配はフロントの領域ではない。もともと、西武とダイエー2球団の現役時代を生かし、守備を重視し、攻撃面ではバントなど小技と豪快さをミックスした野球を目指していた。思わず、気色ばんだのは、全責任を負う覚悟があったからだ。

 「今年はやらんといかんばい」をスローガンに悲願は成就。ダイエーが初優勝した11年前は主将だった48歳。しかし戦いは終わりではない。CS制覇へ、日本一へ、再び戦いのスタートを切る。【松井周治】

 [2010年9月27日8時52分

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